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ロケーション (5)

ハンス・オプ・デ・ベーク


作品について

 日の差す日中、ハンス・オプ・デ・ベークの部屋に入ると、外の景色とは対照的な夜の景色が目に入ってきます。そこは、パノラマの風景が見える、高架の道路脇レストランを模した、黒い舞台装置です。小さなテーブルのひとつにつくと、大きな窓ガラス越しに、オレンジ色の街灯に照らされた高速道路がどこまでも遠くへ向かっていく様を見ることができます。このだまし絵的な風景は、奥行き11メートル、幅10メートルの、彫刻的につくられたものです。道路の表面は9度の斜度で高くなっているため、観る人は遠近感を失い、地平線に向かって進んでいくような錯覚を覚えます(最初の街灯は高さ4メートルですが、最後のものは40センチです)。そうして、何キロメートルも景色が広がっているようなイリュージョンが生まれるのです。
 レストランの店内では、古いラジオから1970年代の不思議な旋律が流れています。細部に至るまで、すべてが黒一色で塗られ、ミステリアスかつ不気味な印象を与えます。部屋は、天井から吊るされたランプで微かに照らされているだけで、そこに入った人は、まるで閉店後のレストランを訪れたような気分にさせられます。レストランは、大きな傾斜した窓から見える堂々たる高速道路と同じくらいすべてが虚しく、人気がありません。

撮影: Hans Op de Beeck
Courtesy of Xavier Hufkens, Brussels


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