インゲス・イデー
《アンノウン・マス》も建築と結びついた作品です。一見、作品はトイレの屋根から流れ落ちる雫のようです。水銀のような艶やかな素材ですが、動きはゆっくり膨張しているようにも見えます。しかし建物の中から見ると、その塊は2つの穴、つまり目をもち、逆さまになってトイレを覗いているゴーストだとわかります。彫刻全体に詩的でアニミズム的な性格をもたらすのはこの「目」です。《アンノウン・マス》はそれを気づかせる仕掛けでもあるのです。
インゲス・イデー
インゲス・イデーは、1992年にハンス・ハマート、アクセル・リーバー、トマス・A・シュミット、ゲオルグ・ツァイの4人のアーティストが公共空間のアート・プロジェクトで協同した際にベルリン(ドイツ)で結成したユニット。グループでの活動とともに、個々の芸術実践も積極的に行っている。パブリックアート作品を《Sounds》(モーンハイム・アム・ライン、ドイツ、2019)、《Travelling Light》(カルガリー、カナダ、2013)など世界各地に設置。また彼らの作品《Undeveloped Playground》は「ミュンスター彫刻ビエンナーレ2000」(エムスデッテン、ドイツ、2001)で展示された。