十和田市現代美術館は、アートによる「新たな体験」を提供し、未来の創造へ橋渡しをする美術館となることを目指します。
「Arts Towada」計画とは、十和田市の中心市街地にある官庁街通り全体を美術館に見立て、現代美術館、アート作品、アートプログラムの3つの要素からなるまちづくりのためのプロジェクトです。
背景には、中央省庁再編(2001年)による国の事務所の統廃合や十和田奥入瀬合同庁舎整備(2001-03年)に伴う出先機関の転居などにより、官庁街通り沿いに多くの空き地が生じたことがあります。
中核施設となる十和田市現代美術館が2008年に開館、続いて美術館向かい側の旧税務署跡地が「アート広場」として整備され、「Arts Towada」は2010年にグランドオープンしました。アート作品に加え、十和田市の歴史や美しい自然、そして地域のもつ活力を引き出し未来へつなげていくような仕掛けも随所に盛り込まれています。さらに2014年には、中央商店街にもエリアを拡大し、展開を続けています。
こうした世界でも稀な試みは、魅力的で美しい官庁街通りの景観を作り出し、十和田市を個性あふれる「アートのまち」として国内外の多くの人々に印象づけています。
⼗和⽥市現代美術館は持続可能性(サステナビリティ)に配慮した運営に努めます。
設置者である⼗和⽥市は、2022 年3 ⽉、「第2 次⼗和⽥市総合計画後期基本計画」に新たにSDGs(持続可能な開発⽬標)とのつながりを明記し、その理念を踏まえた取り組みを進めてゆくことを盛り込みました。
また、世界の博物館でも持続可能性に関する取り組みが進められています。国際博物館会議(ICOM)では、2022 年8 ⽉に開催された総会で博物館を再定義し、博物館は持続可能性を育む施設であることを追記しました。また、ICOM の加盟機関であり近現代美術館のネットワーク組織である国際美術館会議(CIMAM)では、持続可能性とエコロジーに関するワーキンググループを設け、美術館の⽬指すべき「ツールキット」を公開しています。
さらに、⼗和⽥市現代美術館の来館者の7 割は県外からで、観光拠点としての役割も果たしています。観光の分野では、「サステナブル・ツーリズム」の取り組みが進んでおり、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)が国際基準を設けています。⼗和⽥市には、⼗和⽥⼋幡平国⽴公園に指定された⼗和⽥湖、奥⼊瀬渓流、⼋甲⽥⼭の豊かな⾃然があります。他の観光施設や(⼀社)⼗和⽥奥⼊瀬観光機構とも連携し、この基準も参照しながら取り組みを進め、サステナブル・ツーリズムを推進する⼀員として共にGSTC の基準を満たす施設として認証団体から認証されることを⽬指します。
SDGs の17 の⽬標やGSTC の4 つの基準は、⽂化遺産の保護や教育、美術館によるまちづくり(SDGs の⽬標4「質の⾼い教育をみんなに」、⽬標11「住み続けられるまちづくりを」、GSTC 基準B1「地域⽀援」、C2「⽂化遺産の保護」)などを含む広いものです。常設作品を維持管理し、街全体を美術館とする「アーツ・トワダ計画」の拠点施設である⼗和⽥市現代美術館もこうした⽬標に貢献しています。⼗和⽥市現代美術館は、それに加え、主にCIMAM のツールキットに準拠しながら、環境に対する取り組みを進めてゆきます(SDGsの⽬標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、GSTC 基準D1「資源の保全」)。
具体的には、施設⾯では2021 年から照明を順次LED 化し、エネルギー効率を⾼めています。運営⾯では、常設展⽰が中⼼となる美術館のため、企画展を⾏い続ける美術館と⽐べエネルギー消費はもともと少ないのですが、さらに2020 年より、1 年間に開催する企画展の回数を2 回に抑えて⻑期化し、展⽰替えや作品輸送に伴うエネルギーの消費を抑えています。
今後も、現状調査とそれを踏まえた計画の策定を⾏い、計画に沿って実践してゆきます。
(2022 年11 ⽉)
設置者
十和田市
指定管理者
ナンジョウアンドアソシエイツグループ
スタッフ
館長 鷲田めるろ
副館長 豊川大樹
キュレーター 中川千恵子
キュレーター 外山有茉
アシスタント・キュレーター 葛西あいか
エデュケーター 青山真樹
広報 大谷紗絵
コンシェルジュ 土井太陽
総合アドバイザー
南條史生
諮問委員(姓の50音順)
会田大也
小川展子
四方幸子
藤浩志
TAPS : 十和田市現代美術館パートナーズ 特別顧問
小池一子
建物の特徴は、個々の展示室を、「アートのための家」として独立させ、敷地内に建物を分散して配置し、それらをガラスの廊下でつなげていることです。
各展示室を独立配置させることで、それぞれのアート作品にあわせて建築空間をつくることができ、両者がより密接な関係を結ぶことができます。この分散型の構成は、広場と建物が交互に並ぶ官庁街通りの特徴から着想を得ており、アート作品と都市が有機的に混ざり合います。
そして、建物に大小のボリュームをつくることで、大小の建物が並ぶ通りの景観と連続性を持たせています。さらにこの分散配置は、屋外展示スペースやイベントスペースを生み出し、来訪者は屋内空間と屋外空間を同時に体験することができます。
また、アート作品が展示されるスペースはいろいろな方向に向かって大きなガラスの開口を持ち、アート作品がまちに対して展示されているかのような開放的な構成となります。
設計者
西沢立衛
建築家。横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA教授。1966年東京都生まれ。1990年横浜国立大学大学院修士課程修了、妹島和世建築設計事務所入所。
1995年妹島和世と共にSANAA 設立。1997年西沢立衛建築設計事務所設立。
主な受賞に日本建築学会賞、村野藤吾賞、藝術文化勲章オフィシエ、吉阪隆正賞、ベルリン芸術賞*、プリツカー賞*、高松宮殿下記念世界文化賞*。
主な作品に、金沢21世紀美術館*、十和田市現代美術館、ROLEXラーニングセンター*、豊島美術館、軽井沢千住博美術館、ルーヴル・ランス*、済寧市美術館、ボッコーニ大学新キャンパス*、ラ・サマリテーヌ* シドニー・モダン・プロジェクト* 等。(*はSANAAとして妹島和世との共同設計及び受賞)
一般社団法人 全国美術館会議
美術館連絡協議会
青森アートミュージアム5館連携協議会
2001年 十和田市役所企画調整課で構想の検討開始
2002年 プロポーザル方式により「官庁街通り活用基礎調査業務」をナンジョウアンドアソシエイツ(現エヌ・アンド・エー株式会社)に委託
2004年 基本構想完成
2005年 プロポーザル方式により美術館設計者を有限会社西沢立衛建築設計事務所に決定
2005年 設置作品選定のため「アート作品検討委員会」を初開催
2007年 名称を「十和田市現代美術館」と決定
2008年 十和田市現代美術館開館
2010年 アート広場の整備完了により「Arts Towada(アーツトワダ)」グランドオープン
2012年 指定管理者制度を導入