過去の企画展
2020年1月25日(土) - 4月5日(日)
冬季にゆっくりと映像を楽しんでもらう企画、冬眠映像祭の第1 回目。ゲストキュレーターにアニメーション研究の第一人者、土居伸彰を迎えた。
土居が企画したのはマルチジャンルで活躍する3組のアニメーション作家、ひらのりょう、ぬQ、最後の手段によるグループ展である。作家自ら十和田湖や奥入瀬渓流をはじめとするパワースポットを探索し、土地の霊性からインスピレーションを受け、展示室全体を「かいふくのいずみ」をコンセプトとする空間に変容させた。絵画や彫刻、オブジェなどを組み合わせたインスタレーションを制作したほか、新作アニメーションを上映。ここでしか体験できない独自の世界観が新たにつくりだされた。
土居伸彰氏(ゲスト・キュレーター)より
「冬眠映像祭vol.1 かいふくのいずみ インディペンデント・アニメーション最前線!」では、アニメーションを中心にマルチジャンルで活躍する日本のアニメーション作家3組――ひらのりょう、ぬQ、最後の手段――の上映・展示を行います。
同年代のこの3組の作家たちは、わたしたちの生活に根ざした土着のモチーフや、レトロさを感じさせる様々な意匠を用いながら、そのなかに、現代的なスケール観を超えたなにものかを宿らせ、この日常的な知覚のなかに、未来や妖怪(もしくはUFO)、幽霊や太古といった錯綜する時空間をねじ込み、体験させ、転覆させ、しかし最終的に顔をほころばせ、身体を喜ばせるという、共通の作風を持っています。
2015年に渋谷で開催された「パワースポット」展以来となるこの3組によるグループ展では、十和田での事前リサーチによってこの地の霊性にインスピレーションを受け、共同で展示空間を作り上げます。本展覧会はグループ展ゆえ、複数のアーティストのパワーが融合することで、新たな価値観が生まれていくことになるでしょう。思えば十和田市の歴史は複数の自治体(権力=パワー)の合併によってできあがり、十和田湖およびその周辺の自然も噴火をはじめとする複数の自然現象(のパワー)の合せ技により形成されたものです。会場となる美術館という場所もまた、日常とは違った価値観・パワーのあり方を呼び寄せる場であり、そのパワーを浴びるために世界中から人々が訪れ、それがまたパワーをもたらします。
複数のパワーの融合がもたらしうるポジティブな効果・新たな価値観の誕生が、この展示において達成されるべきものとなります。それを達成すべくアニメーションの上映のみならず、絵画や彫刻・オブジェなど、多彩なものを組み合わせることで、種々のパワーを受け取ることのできる素敵な空間を作り上げることを目指します。3組は合同で、この展覧会のための「モニュメント」となる新作を作る予定にもなっています。全体として、「土着」と「宇宙」と「精神世界」をつなぎあわせた温泉のようなホッコリ感のある空間を生み出すことで、来場者のパワーを「回復する泉」――そこに十和田湖の存在が大きく影響しているのは間違いありません――となることを目指します。
動植物が次の春が来るまで眠りにつく時期、本展示は、3組のパワーの合体により、新たな世界を作る力を十和田に蓄えます。「いずみ」のようなこの空間に浸ることで、新たな生に向け、「かいふく」をしにきてください。
image:デザイン:最後の手段、イラスト:ひらのりょう、ぬQ、最後の手段
1. 日本の今を代表するインディペンデント・アニメーション作家たちが一堂に会する
ひらのりょうは、マンガ『FANTASTIC WORLD』をはじめ、近年では俳優としての活動を開始。チャットモンチーや 水曜日のカンパネラらのミュージックビデオを手掛ける ぬ Q は独自の世界観によるマンガやイラストレーションも人気。 最後の手段はマンガとアニメの融合や数々のミュージックビデオ、さらには立体作品により太古と今をつなげる深遠な 世界を展開。それぞれがマルチメディアな活動をする注目のアニメーション作家たちです。
2. 3組のコラボレーションにより展示空間が「かいふくのいずみ」に変身
「冬眠映像祭」は単なる映像の上映企画ではありません。参加アーティスト3組が合同で世界観を設定、アニメーションもそれ 以外も、新作や過去作を集めることで、展示空間全体をひとつのコンセプトに基づいた世界へと変容させます。 今回は、十和田市でのリサーチを経て、展示空間が「かいふくのいずみ」をコンセプトとした空間に変身します。
3. 十和田でのリサーチにインスパイアされた共同制作の新作を発表
今年8月、3組のアーティストは十和田を訪問。十和田湖や奥入瀬渓流、さらには十和田市をとび出してピラミッドをはじ めとする様々なパワースポットをめぐりました。そこで受け取った霊性をインスピレーションとして、3組が合同で新作映像 インスタレーションを制作、冬眠映像祭にてお披露目をします。
土居伸彰(どい・のぶあき)
アニメーション研究・評論、各種プロデュース。ニューディアー代表。新千歳空港国際アニメーション映画祭フェスティバル・ディレクター。ユーリー・ノルシュテイン作品を起点にアニメーションの理論的・歴史的研究と執筆をするかたわら、海外アニメーション作品の配給や各種イベントの企画・運営を行う。ファントーシュ国際アニメーション映画祭の日本特集メインキュレーターほか、海外映画祭での仕事が多数。キュレーターの仕事としては、「イン・ア・ゲームスケープ ヴィデオゲームの風景,リアリティ,物語,自我」(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、谷口暁彦との共同キュレーション)がある。著書に『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論』『21世紀のアニメーションがわかる本』(ともにフィルムアート社)など。
短編アニメーション作家/漫画家。1988年埼玉県春日部市生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。FOGHORN所属。文化人類学やフォークロアからサブカルチャーまで、自らの貪欲な触覚の導くままにモチーフを定め作品化を続ける。MV「Hietsuki-Bushi」(with Omodaka)で文化庁メディア芸術祭エンタテインメント部門新人賞。短編アニメーション「ホリデイ」で学生CGコンテスト・グランプリ。デンマーク、オタワ、サンフランシスコ、アヌシーなど映画祭参加多数。グランギニョル未来、ロロ、山本卓々作品他、演劇関連のビジュアルも多数務める。
Web:http://ryohirano.com/
作家メッセージ
最も尊敬し信頼する作家、ぬQ、最後の手段、と共に 『かいふくのいずみ 』なるものをつくることとなりました。
世にも美しい混沌がこんこんと湧きあがることでしょう!! ようこそ かいふくのいずみへ
photo by Takuya Shima
アニメーション作家。修了制作のアニメーション作品“ ニュ~東京音頭 ”が第18回学生CGコンテスト最優秀賞を受賞、第16回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出されるなど、国内外で多数上映される。
pixiv Zingaro や TETOKA等のギャラリーで個展を開催する他、CM、MV、イラスト等クライアントワークも数多く手掛けている。
Web:http://nuq.o.oo7.jp
作家メッセージ
「この泉には伝説がある。誰もが眠る真夜中に、静まり返った水面が鏡面となり歩ける時がある。すると全てを見通す精霊に会える。精霊の千手に握られたみんなの願いや希望から、一番大切なものを選べるか。大切な気持ちと秘密が一斉に輝き、真っ暗な泉に反射している…」誰もが本当は持っている、普段は眠っている願いが目覚めるような作品を作りたいと思っています。
名称
会期・日時
会場
十和田市現代美術館
開館時間
9:00 − 17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日
月曜日(祝日の場合はその翌日)
観覧料
企画展+常設展セット券1200円。企画展の個別料金は一般800円。
団体(20名以上)100円引き。高校生以下無料。
後援
東奥日報社、デーリー東北新聞社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、十和田市教育委員会
ゲスト・キュレーター
土居伸彰(ニューディアー/新千歳空港国際アニメーション映画祭)