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かつてスナックとして使われていた古びた建物。2階部分には、白い壁や天井、大きなガラスの開口部など、当館の建築を思わせる展示室がすっぽりとはまっています。外側から見てみると、元々あった窓や床は唐突に切り取られており、まるで古い建物のうえに新たな空間を貼りつけたかのようです。異なる用途や文脈を持つもの同士が、決して混ざり合うことなく併存するこの作品は、それぞれの特性を際立たせながら、同時に、両者の対比や緊張関係を浮き彫りにします。

撮影:小山田邦哉


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インタビュー動画


アクセス

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庭つきの赤い屋根の家と、真っ赤な車。ぶくぶくと膨らんだその容姿は、脂肪の増減によって体型が変わる私たちの身体を思わせます。社会的な成功や富の象徴でもある家や車を、どこか滑稽な姿かたちに変形させたこの作品は、資本主義や美醜についての既存の価値観をからかうようです。また、《ファット・ハウス》内に流れる映像では、家自身が「私は家?それともアート?」とつぶやきながら、アイデンティティについての問いを投げかけます。

撮影:小山田邦哉


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アーティスト・インタビュー

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増殖する黄色い水玉がアート広場の芝生に広がり、その上に色あざやかな水玉と網目模様のカボチャや女の子、犬、きのこの彫刻が8点、設置されています。草間は幼少期から幻聴や幻覚に悩まされ、10歳の頃より、水玉と網目模様をモチーフに絵を描きはじめました。押しつぶされそうになる精神を保ち、目の前の幻覚を乗り超えるために制作された草間の作品は、楽しさだけでなく、強烈な印象もあわせもちます。

撮影:小山田邦哉
©YAYOI KUSAMA


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関連展覧会

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広場中央の小高い丘の上に置かれた、丸く大きな岩。刻まれた「EVESHETIA」という文字は、ヘブライ語で「創造の石」を意味し、ユダヤ教において世界の創造が始まった地点とされています。日没になると、岩からは一筋の神秘的な光が、夜空へと高く、まっすぐに放たれます。その光の柱を見上げる時、この場所が、同じ空のもとに広がる世界や、広大な宇宙の一部としてあるのだということを、直感的に感じられるでしょう。
*Rabbi Yaakov Asher Sinclair, Seasons of the Moon

撮影:小山田邦哉


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アーティスト・トーク

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アーティストグループとして活動し、公共彫刻を数多く手がけるインゲス・イデーは、白い直方体が印象的な美術館の建築に対して、あえて流線型の2つの彫刻 ─広場を浮遊する《ゴースト》と、トイレ棟の上部から流れ落ちるようにして中をのぞき込む《アンノウン・マス》─を制作しました。建築のもつスマートな無機質さを、いたずらっぽくずらしていくかのような2体の存在が、広場のほかの作品とも呼応し、空間全体に一体感を与えています。

撮影:小山田邦哉


作品


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まるで粘菌が作り上げたかのような有機的な形状の空間に入ると、穏やかに語りかける声によって、心と体の緊張をほぐし、自己と周囲の環境との境界が溶け合う催眠(ヒプノティックな)状態へと誘われます。催眠術は、歴史的に強固な現実の社会をいっとき離れ、まだ実現されていない新しい生き方を想像する手段として用いられることがありました。建築事務所でありながら思索的な活動を行うニュー-テリトリーズ/ R&Sie(n)は、生物工学やロボット工学など多様な領域を横断しながら、科学、環境、人間の関係を問い続けています。

撮影:笹原清明


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駐車場の花壇に、ふっくらとした小さな鳥が43羽、並んでいます。くちばしを開け空を見上げるその姿は、仲間同士で話しをしているようにも、餌をついばもうとしているようにも見えます。本山は、その土地をテーマに架空の物語をつくり、そこに登場する動物を作品のモチーフとしています。命を吹き込んでいくかのように一体一体、金属を鋳型に流し込みつくられた鳥たちが、この場所で生き生きと暮らす様子に出会うことができます。
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むかし、むかしのお話
北の国では、たくさんのどうぶつたちが暮らしておりました。春にはやませが、冬には颪(おろし)が吹き、どうぶつたちは木の陰にかくれたり、岩のすきまに身を寄せたりして、寒さをしのいでおりました。
 
地球が前より温かくなってきて、たくさんの鳥たちが南の国からやって来ました。北の国はなんだか過ごしやすそうだと、うわさを聞いたみたいです。
南の国の鳥たちは、やませも颪(おろし)も知りません。冬になり、あまりの風の冷たさに我慢ができなくなりました。
するとだれかが西二番町に良さそうな場所を見つけたので、早速行ってみることに。
そこはみんなが楽しそうにしている美術館でした。床には美しい花が描かれています。やませも颪(おろし)もやってきません。
温かい飲み物、美味しそうな匂いもします。
ここなら寒くもないし、美味しいものもあるし、なんだか過ごしやすそう。餌を探す手間も省けると、鳥たちはここに居座ることにしました。

お客さんが来ると、よこどりしようと上から狙いを定めます。
最初は可愛いねと言っていたお客さんも、あまりに鳥たちの目が気になって、とうとう美術館の人たちが怒り出したのです。ぶつぶつ文句を言いながら、鳥たちは美術館を出て行くことにしました。
外は颪(おろし)が吹き荒れています。
鳥たちは横に並んで身を寄せ合い、駐車場でじっとしていました。

それを見ていた近所の人たちが、かわいそうだと鳥の周りに花を植えてくれました。花にやってくる虫をつまんだり、花の蜜を舐めたり。
鳥たちは北の国で居場所を見つけたのでした。

おしまい
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撮影:小山田邦哉


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