三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館ではサテライト会場「space」にて、2023年9月16日(土)– 12月17日(日)まで三野新の個展を開催します。
演劇と写真という異なる分野を学び、舞台作家/写真家として活動してきた三野は、これまで土地や風景に眠る歴史・記憶をもとに戯曲を書き、さらにそれをパフォーマンスやインスタレーションという形で「上演」するという領域横断的な表現を行なってきました。
三野は以前から日本に駐留する米軍の存在へと関心を寄せ、「沖縄」を題材とした作品も発表してきました。本展では、同じく米軍基地を擁する青森県三沢市でのリサーチから書き下ろした新作の戯曲「外が静かになるまで」を発表します。前作「クバへ/クバから」は、東京に住むアーティストがいかに「沖縄」に向き合うことができるのかという「当事者/非当事者性」という問題系を探るものでしたが、昨年度ニューヨークでの半年間の滞在を経た三野が今回取り組むのは、よりマクロな視点から「戦争の気配を感じながら生きる私たち」へと向けた作品です。ますます不安定さを増していく世界に生きる私たちにとって、三野の新作は私たちのうちに「眠る」意識へと呼びかけるものとなるでしょう。 
本展は、spaceでのインスタレーションと、十和田のまちなかを会場にした複数のインタレーションで構成されます。一本の戯曲が複数のインスタレーションとしてまちに配され、それらを読み集めていくことで一つの作品として体験することができる実験的な展覧会となります。

戯曲はこちらからも読むことができます。

十和田市現代美術館 サテライト会場「space」
昨年2022年度より、アーティスト目[mé]による空き家を展示室へと改装した作品「space」を、美術館のサテライト会場として運営しています。ホワイトキューブの展示室が突如まちなかの建物の2階部分に出現したかのような「space」を拠点に、若手アーティストによる実験的な表現を紹介しています。

写真:三野新 デザイン:石塚俊


アクセス

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館ではサテライト会場「space」で、2023年7月1日(土)‒ 9月3日(日)まで、筒 | tsu-tsu による個展「地上」を開催しました。
筒| tsu-tsu は、「実在の人物を取材し、演じる」という一連の行為を「ドキュメンタリーアクティング」と名付け、実践しています。「演じている瞬間」だけでなく、取材、役作りや稽古といった、作家が他者になろうとする過程が可能な限り公開されました。
作家は、本展の会期中十和田市に滞在し、まちとそれぞれの関わりを持つ人物を取材し、演じました。市内の4 箇所を中心とした日課を繰り返し、ドキュメンタリーアクティングの過程を公開しました。space には、展覧会前の十和田でのリサーチをはじめ、日課や公開稽古で発見された演じるための素材が保管され、更新されていきました。また、会期終盤には 2 ヶ月間の蓄積を作家の身体を用いて出力する追想パフォーマンスを実施しました。

「地上」というタイトルは、自身が生まれ育った土地以外で初めて演じる行為に向き合った作家が、十和田市のまちを「歩くことしかできなかった」実感を表しています。また、取材を続けるなかで、この地に暮らす人々と、美術館から space に向かう観光客の導線が同じでありながら、両者が交わることがないという実態が浮かび上がりました。「2 つの地上があり、その関係性を結び直す」ということも本展のテーマです。
「地上」は、人々の暮らしが営まれる場そのものです。インタビューを通して、各々の主観に基づく人生に招かれた筒は、十和田という「地上」が歩みうる新たな現実を、演技と現実の裂け目から想像しようと試みました。

【「筒 | tsu-tsu 地上」記録映像】

十和田市現代美術館 サテライト会場「space」
昨年2022年度より、アーティスト目[mé]による空き家を展示室へと改装した作品「space」を、美術館のサテライト会場として運営しています。ホワイトキューブの展示室が突如まちなかの建物の2階部分に出現したかのような「space」を拠点に、若手アーティストによる実験的な表現を紹介しています。


アクセス

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館では、2023年6月24日(土)―11月19日(日)まで、上海を拠点に活動している劉建華(リュウ・ジェンホァ)の個展を日本で初めて開催しました。磁器発祥の地である景徳鎮で育った劉は、磁器工房での職人時代を経て彫刻を学びました。中国における経済や社会の変化や、それに伴う問題をテーマに、土や石、ガラス、陶磁器などを使って立体作品やインスタレーションを制作しています。
本展ではメインとなる展示室に、ペットボトルや靴などの日用品を磁器で制作した《遺棄》(2001年-2015年)を展示しました。私たちが使う日用品の大半は一時の役目を果たすと放置され、壊れてゴミになります。この作品は、私たちが土に還らない素材に囲まれて生活していることや、処分できないものを蓄積し続けている現状を想像させます。その他にも、瓶や壺の口と首の部分だけを切り取った最新作《塔器》(2021年-2022年)や、当館の常設作品《痕跡》(2010年)の造形ともつながる浮遊する枕《儚い日常》(2001年-2003年)、壁につたう墨汁や陶器の仕上げに使う流動的な釉薬を思わせる《兆候》(2011年)など、劉の初期から近年までの作品を紹介しました。展覧会のタイトル「中空を注ぐ」は、中が空洞の陶磁器の形や流動的な釉薬を連想させますが、意味も内容もない「無意味さ」を作品に込めた劉の制作への姿勢を示しています。そして、空虚な「もの」や「こと」が広がっていく現代のありさまともつながっています。繊細で脆い陶磁器が、空虚さに満ちた現代を語る展覧会となりました。

撮影:小山田邦哉

【3DVRによる展覧会アーカイブ】はこちら

【「劉建華 中空を注ぐ」トレイラー】

映像編集:Kazuya Ishikawa


「劉建華 中空を注ぐ」カタログ

三野新 外が静かになるまで

映像やパフォーマンスなど様々な技法を用い、セクシュアリティ、ジェンダーへの問題を追究する美術家 百瀬文の美術館個展

十和田市現代美術館では、百瀬文の個展「口を寄せる」を開催します。百瀬は主に映像作品で、他者とのコミュニケーションの中で生じる不均衡をテーマとし、身体・ セクシュアリティ・ジェンダーを巡る問題を追究しています。本展では、女性声優をテーマにした新作サウンド・インスタレーション《声優のためのエチュード》を発表します。この作品は、「声」だけが聞こえ、性別を判断できるキャラクターの容姿やしぐさが映し出されたアニメーションがありません。映像と切り離された「声」は、性別を超えた流動的な存在として表れます。新作の他に、耳の聞こえない女性と耳の聞こえる男性との触れ合いに生じるすれ違いが映し出されている《Social Dance》や、百瀬の父親が百瀬の書いた173問の質問項目に口頭で答えていくなかで、その回答が父親の意志から離れていく《定点観測[父の場合]》など、性別や世代の異なる他者との関係やその背後にある見えない存在や抑圧が映し出された作品を出展します。展覧会タイトルの「口を寄せる」は、他者に寄り添う動作を連想させますが、「声」がさまざまな身体を行き来していく様子にもつながります。
存在しているのに、抑えつけられ、ないものとされていたさまざまな「声」に、耳を傾けてみてください。

デザイン:岡﨑真理子

【「百瀬文 口を寄せる」トレイラー】

映像:瀬尾憲司


百瀬文 作品集「口を寄せる」

三野新 外が静かになるまで

詩作や映像制作などメディアを横断するアーティスト 青柳菜摘が、十和田市のまちなかで映像インスタレーションを展示

 十和田市現代美術館ではサテライト会場「space」でアーティスト 青柳菜摘の個展を2022年9月17日(土)から12月18日(日)まで開催します。
 青柳菜摘は、自身を取り巻く環境と向き合いながら、見えない存在を捉えるために、映像や文章を用いて表現してきました。近年では、クラウドソーシングで他者の物語やイメージを収集するなど、現代における個人の在り方と、その観察方法を模索しています。

 青柳にとって6年ぶりの個展となる本展では、航海によって発展した中国発祥の媽祖(まそ)信仰をきっかけに構想した、架空の航海日誌のような作品を発表します。船は、今では身近な移動手段ではなくなりましたが、かつては遠方へ赴く唯一の手段であり、未踏の地への命を懸けた冒険でもありました。航海記からSFに登場する宇宙船まで、数々の文学の主題ともなっています。本展は、人々の船での移動によりその信仰が東アジア広域に拡がった航海の女神 媽祖のほか、大航海時代に長い航海での水分補給と健康維持のために発展したと言われるカクテルなど、船をめぐる古今東西の要素を織り交ぜた映像インスタレーションを、spaceを始め、美術館内カフェや十和田市内の花屋、温泉、バー、スナックの6つの拠点で、一冊の絵本を編むように展開します。かつて海を渡った無数の人々の希望や苦難、ともに各地で根付いた生き物や酒、信仰。青柳が描く船なき航海日誌は、先行きの見えない時代を生きる私たちを、現在の世界に今もそっと生き続ける彼/彼女らと出会う旅へと誘うでしょう。

 本展は、それぞれ開場時間の異なる6つの会場での展示となります。ぜひご来場の前にハンドアウトで会場の情報をご確認ください。


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ハンドアウト

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館では、2022年7月より、アーティスト 目[mé]が一軒の空き家をホワイトキューブへと改装した作品「space」を美術館のサテライト会場とし、若手アーティストの作品を紹介します。初回となる2022年7月1日(金)− 9月4日(日)は、主にインスタレーション・アートを制作する大岩雄典の個展を開催します。
大岩雄典は、多層な空間と、物語やせりふといった言葉を中心にした作品の制作や、研究、執筆、キュレーション等、多岐にわたり活動する作家です。物語論・言語哲学、フィクション研究、ゲームスタディーズなどの自身の関心領域に留まらず、戯曲、話芸、漫才、ホラーといった様々な言葉の様式を独自の視点から空間に組み込む(インストール: install)ことで、固有の時間感覚をもつ「空間芸術」として提示します。
大岩は美術館での初の作品発表となる本展のために、展示会場であり、目[mé]の作品でもある「space」と、その周辺の十和田市街の空間が持つ性質を注意深く観察し、これまでの作家の関心であった、ドラマ(劇)、鑑賞者の行為や動線、展覧会の制度との、一種の「地口」を見出します。言葉遊びのような空間の操作は、展示会場であるspaceから十和田市街へ重ねて投影され、観客のパラノイア的な想像を掻き立てるでしょう。

画像:「渦中のP」ビジュアルデザイン
デザイン:北岡誠吾

「大岩雄典 渦中のP」展 カタログ (PDF)
2023年3月1日 十和田市現代美術館発行


アクセス

三野新 外が静かになるまで

彫刻家 名和晃平による本展のために制作された最新作を公開

十和田市現代美術館と9月に開館した地域交流センター[設計者:藤本壮介]の二会場で、彫刻家 名和晃平の個展「生成する表皮」を開催しています。会期は、十和田市現代美術館:2022年6月18日(土)–11月20日(日)、地域交流センター:10月1日(土)– 11月20日(日)です。

名和は、セル(細胞・粒)で世界を認識するという独自の概念を軸に、ガラスや液体などのさまざまな素材や技法を横断しながら、彫刻の新たなあり方を一貫して追求しています。素材の探求を通じて彫刻の概念を拡張してきた名和の活動の変遷を、大学院生時代のドローイングシリーズ「Esquisse」と代表作の「PixCell」、そして新作「White Code」を含む多様な作品シリーズから紹介しています。
地域交流センターでは、名和の版画作品「Array – Black」シリーズの円と線で構成された《Dot》や《Line》の平面作品や、苔や菌糸のような絨毛を付着させた「Velvet」シリーズ、数ヶ月間かけて表面が少しずつ変化していく「Black Field」シリーズの立体作品を展示します。

【 展覧会に関して:名和晃平 】
太古から変わらない現象に、新たなイメージを重ね合わせることで、現象への解釈は無限にひろげることができます。例えば、「断続的な雨」という現象に「コード」という現代のイメージを重ねることで、その現象の意味を拡張するなどです。本展が取り扱うのは、そうした日々の理解からこぼれ落ちたマージナルな情報領域であり、それを受け止める感覚と想像の拡張です。

展覧会タイトル「生成する表皮(英語:Generative Interface)」は、名和晃平の作品に通底する制作概念を表しています。レンズ効果により視点の移動とともに表皮が映像的に姿を変える「PixCell」シリーズ、シリコーンオイルからグリッド状に泡が沸き立つ《Biomatrix (W)》。刻々と変化する界面は視触覚を静かに刺激して、見るものの感性を鋭敏に研ぎ澄まします。それは、情報化時代における知覚や認識のリアリティを背景に、物質と感性を介するインターフェースとしての「表皮」に焦点を当てています。

画像:名和晃平《Biomatrix (W)》2022年
ミクストメディア
撮影:小山田邦哉

【「名和晃平 生成する表皮」トレイラー】

Videography: Ishikawa Kazuya

三野新 外が静かになるまで

-遊ぶ、演じる、こだまする アートがつなぐ人とまち-

十和田のまちを美術館にするプロジェクト“Arts Towada”が10周年を迎えるのを記念して、全3期にわたって開催される展覧会「インター + プレイ」展。
新しい創造を生みだし、インスピレーションの源泉となってきたArts Towadaの中核、十和田市現代美術館は、アートを通じて人と人、人とまちが出会う、インタープレイ(相互作用)の現場であり続けてきました。本展は、その精神を体現するものです。
3期を通じて、身近なものをモチーフに私たちの五感を刺激する作品をつくる鈴木康広が、ベンチにもなる大型の野外彫刻を設置。引力をもち、そのパワーが外側へと広がっていく十和田の姿を表現しています。また、近年芸術祭や大規模個展で注目を集めている目[mé]は、まちなかの建物に真っ白なギャラリー空間を唐突に出現させます。
美術館内では、鏡とビデオカメラとプロジェクターを使い、見る人の感覚を撹乱する津田道子のインスタレーション、音に身をゆだね溶け込んでいく感覚をもたらすevalaの作品、十和田での滞在調査を踏まえ〈赤〉をテーマに制作される松原慈の新作を展示します。
また、会期中には問題行動トリオが美術館の展示室で、音楽とダンスの公演を行います。

■全期・・・鈴木 康広[十和田市現代美術館 前庭に展示]、目[mé][十和田市まちなかに展示]
■第1期出展作家・・・津田 道子、evala、松原 慈
■パフォーマンス・・・問題行動トリオ(野村 誠+佐久間 新+砂連尾 理)[会期ごとに1回ずつ開催予定]

※evala《Anechoic Sphere ー Haze》は、先着順に整理券を配布しご案内しております。観覧できる人数に限りがあるためすべてのお客様がご観覧いただけない場合がございます。あらかじめご了承ください。

画像:松原 慈《真実/自由》”Arts Towada十周年記念 「インター + プレイ」展” 展示風景(十和田市現代美術館、青森、2020 年)撮影:小山田邦哉

【「インター + プレイ」展 第1期 CM】

Videography: Ishikawa Kazuya


見どころ


ハンドアウト

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館は、Arts Towada 十周年を記念した全3期にわたる企画展「インター + プレイ」を昨年より開催しています。
第2期では、当館常設展示作家の一人であるトマス・サラセーノの作品を展示します。サラセーノは、環境正義と異種間の共生を掲げ、地上
だけでなく宇宙規模まで視野を広げプロジェクトを展開しているアーティストです。当館の常設展示作品《オン・クラウズ(エア-ポート-シティ)》とも繋がりのある「バルーン」と「クモ」をキーワードに、サラセーノの近年の代表作を紹介します。

本展では、ジョロウグモなどの日本のクモの伝承に着想を得た《クモのオラクルカード》の新作3点が初公開されます。
2019年に発表された本シリーズは、カメルーンとナイジェリアに住むマンビラ族のクモを使った占いから着想を得て制作されたものです。オラクルカードにも登場するミズグモの姿に迫っているのが、出展作品《大気の海の底に棲む(水生クモ)》です。水中で生活するその珍しい生態から、ある種が新しい環境に適応するために生活様式を変化させる可能性を提示します。
《熱力学の組曲》は、空気や人の動きによって、展覧会中にドローイングを生み出すインスタレーションです。また、複数人が共同し、誰でもアクセスできる方法で彫刻《エアロソーラー》を飛行させることができるキット《エアロシーン・バックパック》を展示します。バルーンにまつわる作品群は、化石燃料を使用せず、空気を汚染しない未来を描くサラセーノが協力者と展開するプロジェクト「エアロシーン」の理念を展示室で表現します。

また、鈴木康広《はじまりの果実》、目[mé]《space》内に新たに《movements》を展示に加えるほか、問題行動トリオによるパフォーマンスも開催します。

画像:トマス・サラセーノ 《クモのオラクルカード》2021年
撮影:Studio Tomás Saraceno
画像提供:作家、Arachnophilia

【「インター + プレイ」展 第2期 CM】

Videography: Ishikawa Kazuya


見どころ

三野新 外が静かになるまで

十和田出身の映像作家 水尻自子と漆彫刻家 青木千絵による新作を公開

十和田市現代美術館では、Arts Towada 十周年を記念した全3期にわたる展覧会「インター+プレイ」展を開催しています。
その最後を飾る第3期では、青森県十和田市出身の映像作家 水尻自子と漆彫刻家 青木千絵の作品を展示します。

水尻自子のアニメーション作品は、鑑賞者の触感や痛覚を刺激し、まるで視覚で物に触れているような感覚を呼び起こします。本展の作品はミュージシャンの本田ゆかが音楽を担当し、十和田のために制作された新作です。一方、漆を用いた青木千絵の彫刻作品は、身体をモチーフにし、体の内側に溜まった感情が外側の身体へと現れ、覆い尽くすような造形です。身体を覆う幾重にも重ねた漆の鏡面には、奥にのみこまれるような深みがあり、鑑賞者を作品の内側に惹き寄せます。展覧会では新作と旧作を組み合わせて展示します。

第3期では、身体の内と外を越境し、他者と感覚を共有していく映像や彫刻作品が中心となります。美術館とまち、人と自然との関係から考え始めた相互作用インタープレイという展覧会のテーマを、身体感覚の領域にも広げていきます。

なお、第2期のトマス・サラセーノの展示の一部や、通年展示の鈴木康広《はじまりの果実》、目[mé]《space》は、引き続き展示し、問題行動トリオによるパフォーマンスも会期中に開催します。

画像:青木千絵《BODY18-2》2018年 撮影:池田ひらく

【「インター + プレイ」展 第3期 CM】

Videography: Ishikawa Kazuya


見どころ

三野新 外が静かになるまで

冬季にゆっくりと映像を楽しんでもらう企画、冬眠映像祭の第1 回目。ゲストキュレーターにアニメーション研究の第一人者、土居伸彰を迎えた。
土居が企画したのはマルチジャンルで活躍する3組のアニメーション作家、ひらのりょう、ぬQ、最後の手段によるグループ展である。作家自ら十和田湖や奥入瀬渓流をはじめとするパワースポットを探索し、土地の霊性からインスピレーションを受け、展示室全体を「かいふくのいずみ」をコンセプトとする空間に変容させた。絵画や彫刻、オブジェなどを組み合わせたインスタレーションを制作したほか、新作アニメーションを上映。ここでしか体験できない独自の世界観が新たにつくりだされた。

土居伸彰氏(ゲスト・キュレーター)より

「冬眠映像祭vol.1 かいふくのいずみ インディペンデント・アニメーション最前線!」では、アニメーションを中心にマルチジャンルで活躍する日本のアニメーション作家3組――ひらのりょう、ぬQ、最後の手段――の上映・展示を行います。
 同年代のこの3組の作家たちは、わたしたちの生活に根ざした土着のモチーフや、レトロさを感じさせる様々な意匠を用いながら、そのなかに、現代的なスケール観を超えたなにものかを宿らせ、この日常的な知覚のなかに、未来や妖怪(もしくはUFO)、幽霊や太古といった錯綜する時空間をねじ込み、体験させ、転覆させ、しかし最終的に顔をほころばせ、身体を喜ばせるという、共通の作風を持っています。
 2015年に渋谷で開催された「パワースポット」展以来となるこの3組によるグループ展では、十和田での事前リサーチによってこの地の霊性にインスピレーションを受け、共同で展示空間を作り上げます。本展覧会はグループ展ゆえ、複数のアーティストのパワーが融合することで、新たな価値観が生まれていくことになるでしょう。思えば十和田市の歴史は複数の自治体(権力=パワー)の合併によってできあがり、十和田湖およびその周辺の自然も噴火をはじめとする複数の自然現象(のパワー)の合せ技により形成されたものです。会場となる美術館という場所もまた、日常とは違った価値観・パワーのあり方を呼び寄せる場であり、そのパワーを浴びるために世界中から人々が訪れ、それがまたパワーをもたらします。
 複数のパワーの融合がもたらしうるポジティブな効果・新たな価値観の誕生が、この展示において達成されるべきものとなります。それを達成すべくアニメーションの上映のみならず、絵画や彫刻・オブジェなど、多彩なものを組み合わせることで、種々のパワーを受け取ることのできる素敵な空間を作り上げることを目指します。3組は合同で、この展覧会のための「モニュメント」となる新作を作る予定にもなっています。全体として、「土着」と「宇宙」と「精神世界」をつなぎあわせた温泉のようなホッコリ感のある空間を生み出すことで、来場者のパワーを「回復する泉」――そこに十和田湖の存在が大きく影響しているのは間違いありません――となることを目指します。
 動植物が次の春が来るまで眠りにつく時期、本展示は、3組のパワーの合体により、新たな世界を作る力を十和田に蓄えます。「いずみ」のようなこの空間に浸ることで、新たな生に向け、「かいふく」をしにきてください。

image:デザイン:最後の手段、イラスト:ひらのりょう、ぬQ、最後の手段


展示の内容とみどころ


ゲスト・キュレーター

三野新 外が静かになるまで

国内外で注目を集めるAKI INOMATAの、日本の美術館では初となる個展。主題となった「Significant Otherness(重要な他者性)」は米国の科学史家、ダナ・ハラウェイが提唱する概念から着想を得たもの。本展では、3Dプリンターによる実在の都市を模した「殻」をやどかりに提供し、住み替えてもらう《やどかりに「やど」をわたしてみる》をはじめ、他の生きものとの協業を通して人間や社会の本質を問いかける6つのプロジェクトを紹介した。人間とは異なる生きものの視点から世界を表現し、長い時間の流れや環境、生態系をめぐる思索を鑑賞者に呼び起こした。

※photo:企画展「AKI INOMATA:Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」展示風景 2019年 撮影:小山田邦哉


展覧会の内容とみどころ


まちなかの会場


AKI INOMATA 記録集

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館が2018年から取り組む〈「地域アート」はどこにある?〉プロジェクトの一環として本展は開催された。地域の人々と協働しながら実験的な作品を展開する北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志による展覧会。北澤とNadegata Instant Partyは、新作を美術館と十和田のまちに展開し、藤はキュレーターの金澤と自身の学生時代をモデルにした小説を発表した。タイトルの「ウソ」とは、芸術表現における虚構やフィクションを意味し、それらをコミュニティにもち込むことで、現実の世界に変化をもたらす作家たちの実践が間近に見られる展示となった。


Videography:KAZUYA ISHIKAWA


書籍

三野新 外が静かになるまで

毛利悠子は身近なものを用いて電気や磁力など目に見えないエネルギーの存在を可視化するインスタレーション作品を制作してきた。美術館での初個展となる本展では、アンモナイトからケーブルのより線など、大小さまざまな渦や回転、螺旋の運動から着想を得て、空間をダイナミックに活かした音響彫刻を発表。天体の運行や社会の変容を象徴的に表現し、毛利の新しい試みとなった。さらにシルクスクリーンや映像の制作、現場で即興的に生みだされるインスタレーション、まちなかでの作品展示も行われた。
Photo image:
《墓の中に閉じ込めたのなら、せめて墓なみに静かにしてくれ for V.T. 》展示風景
2018年 撮影:小山田邦哉

【紹介ムービー】


展示の内容と見どころ


公式展覧会図録

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館の常設展示作品《コーズ・アンド・エフェクト》(2008)でも知られる、アジアを代表する世界的美術家のスゥ・ドーホー。当館の開館10周年を記念して開催された個展では、作家の代表作でもある半透明の布を使ったシリーズの最新作を展示するとともに、スゥがロンドン、ニューヨーク、ソウルを移動する中で得た視点を表現した映像作品やドローイング、絵画の展示も行われた。これらの作品はいくつかの場所とその文化を経験するときに見えてくるものを通して、人間性やアイデンティティとはなにかという根本的な問いを投げかけるものとなった。

2023年1月より当館では名前の表記をソ・ドホに変更いたしました。

Photo image:《Hub, 310 Union Wharf, 23 Wenlock Road, London, N1 7ST, UK》 Photo by Taegsu Jeon
Courtesy the artist, Lehmann Maupin, New York, Hong Kong and Seoul and Victoria Miro, London/Venice(参考画像)


展示の内容と見どころ


公式展覧会図録

三野新 外が静かになるまで

ラファエル・ローゼンダールはインターネット空間を発想と表現の場とする、時代の最前線を走るアーティストのひとりだ。ローゼンダールの作品は、インターネット空間にあるため、アクセスしたいときにいつでも誰でも触れることができる。本展のタイトルとなった「Generosity(寛容さ)」は、そのように誰にでも惜しみなく提供されている作家の芸術の本質を表したもの。ローゼンダールにとって世界初となる美術館での個展は大規模な映像インスタレーションやタペストリー作品、インタラクティブ映像の展示で構成され、彼の芸術の豊かな広がりが表現されることとなった。

※Main photo image : Much Better Than This, Times Square Midnight Moment, New York, 2015  Photography by Michael Wells

【紹介ムービー】


展示の内容と見どころ


公式展覧会図録


助成

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館にコミッションワークを展示する国内外のアーティストを中心とした展覧会。東日本大震災からの復興の一助とするとともに、美術館と人々の絆を深めることがめざされた。
アートとまちづくりの一体化を目標に、開館から3年間さまざまな活動に取り組んできた中で起きた震災に対して、私たちになにができるのか。多くの方々を勇気づけ、心を豊かにする場を提供し続けることで、役に立ちたいと考えた。会場での募金を被災地に寄付したほか、展覧会終了後、出品作品のチャリティ販売をし、売り上げを義援金とした。

三野新 外が静かになるまで

日本のアート界のみならず国際的にも高い評価を受けるオノ・ヨーコは、十和田市現代美術館のためにコミッション・ワーク(常設展示作品)を制作したアーティストのひとりである。オノの活動は、アート、音楽、パフォーマンス、映像と多岐にわたっており、鑑賞者が能動的に参加することで成立する作品を多く制作している。展示される場所やその意味を考察した作品は、人々に深い感銘を与え続ける。十和田市現代美術館の開館を記念して開催された「オノ・ヨーコ 入口」展では《空の梯子》《テレフォン・ピース》など全10点が展示された。

三野新 外が静かになるまで

十和田市は古くから馬産地として知られる。十和田湖や八甲田はもちろん、市街地に近い里山にも数多くの野生動物が生息している。また、十和田市現代美術館にも動物をモチーフとした作品がある。ヒトと動物との共生は、豊かな自然に恵まれた十和田市という都市では大きなテーマである。本展は子どもが親しみやすい「動物」をモチーフにしたさまざまな表現形態の作品を通じて、現代アートの多様な表現に触れる機会となるよう企画された。

三野新 外が静かになるまで

まちに溶け込む建物や路地、歴史を伝える祭りや行事、雪の降り積もる冬や緑が生い茂る夏を過ごす人々など、すでに失われた風景と現在の市内の様子を記録した写真は、市を代表する写真家である和田光弘によって撮影された。和田がこれまで撮りためてきた写真と展覧会を機に撮り下ろされた作品は、日常の視点を通し記憶をたどる。「人とまち」の記憶を次の世代へとつなげる役割を果たすとともに、鑑賞者には十和田の魅力の再発見を促す展示となった。

三野新 外が静かになるまで

平成18年9月に、美術館工事現場の仮囲いを使って行われたプロジェクト「アートチャンネルトワダVol.5 みんなの松」作業風景と市民の皆さんが描いた絵の写真展を行います。また、指導いただいた山本修路さんの原画も展示します。

三野新 外が静かになるまで

十和田市現代美術館の常設展示作家のひとりであるチェ・ジョンファは、ソウルオリンピック・スタジアムを使用した国家的プロジェクトを成功させるなど、韓国の現代アート界を代表するアーティストとして知られる。彼は、芸術や文化は限られた人々のものではなく、見る人だれにでも開かれていると一貫して訴え続ける。
開館1周年を記念して「チェ・ジョンファ OK!」展は開催され、十和田市現代美術館のほか、商店街など16カ所で展示が行われた。

三野新 外が静かになるまで

十和田市出身の写真家・岩木登による八甲田の山岳と森と川の四季をめぐる写真展である。2009年キヤノンカレンダーのために撮り下ろされた13点を中心に構成された、ネイチャーフォトグラフィ計65点を大型パネルで展示した。岩木は2007年から2008年にかけて、八甲田山中に年間100日の単独野営を重ねて、南八甲田の原生林や源流、厳冬期の北八甲田を撮り続けた。

三野新 外が静かになるまで

日本の国技「相撲」をテーマにした現代美術展である。15尺、5メートルに満たない円の中に繰り広げられる壮大な格闘のドラマ―。相撲は、天下泰平、五穀豊穣など、人々の願いの象徴として、伝統と様式を今日まで保ち続け、日本人の精神にその世界観を深く刻み込んできた。
本展は、国技館に掲揚される優勝額や、相撲をモチーフとした平面・立体作品、相撲の取り組み映像を新たな視点で見せる映像インスタレーションなどを通じ、先端的な現代美術という領域において相撲の美を浮かび上がらせる試みである。

三野新 外が静かになるまで

和紙に「つつみ」「むすび」「おくる」―。日本古来の礼法「折形」に現代感覚を注ぎ込み、日々の暮らしへと取り入れることを試みる折形デザイン研究所の初となる展覧会である。
折形の様式とルールを集大成した伊勢貞丈『包結図説』(1840)をはじめ、設立以来収集された資料をもとに、過去と未来、東洋と西洋、人ともの、伝統とモダンの境界を超えて、折形とモダンデザインの融合が図られた。本展は、折形デザイン研究所が生みだす新しい時代の包結図説となった。

三野新 外が静かになるまで

2人一組となった作家同士のコラボレーションによる、「出会い」をテーマにし、展示空間をキャンバスに見立てたインスタレーション作品を展示。美術のみならずさまざまなジャンルで活躍する作家が参加した。
展示空間と作品が出会い、作品と観客が出会う―。その「出会い」を通して、「表現」の可能性を広げ、新しい「価値」を生みだすことがめざされた。会場となったのは、建築とその取り組みから21世紀型の新しい美術館のあり方を示そうとする青森県立美術館と十和田市現代美術館である。これは「県美」と「現美」の出会いでもある。

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Arts Towadaプロジェクトのグランドオープンを記念した草間彌生の展覧会である。アート広場に屋外インスタレーションを恒久展示する草間彌生は水玉や網目が無限に増殖する絵画やソフトスカルプチュア、パフォーマンス、また室内を彼女の描く絵画空間のように変貌させるインスタレーションを制作し、国内外で高い評価を受けてきた。絵画、インスタレーション、小説や詩など、初期の貴重な作品から新作彫刻まで、半世紀に及ぶ活動が、美術館のみならず中心商店街にも展開され、十和田のまちが草間の力強く鮮やかな世界で彩られた。

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岩手県を中心に森と河原を30年にわたって撮影してきた細川剛による写真展である。
青森県の山岳部に広がる白神や八甲田のブナの原生林は、悠久の時間が静かにめぐる、貴重な自然であるといわれている。かたや、かつての風光明媚な「奥入瀬」の姿を失った十和田市を流れる河川敷は、人間の生活空間に身を添わせ、人に翻弄され続ける自然である。「森」と「川原」。あまりにも違う2つの自然を、改めて見つめ直す展示となった。

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スガノサカエは自身の作品を、平面・立体問わず“図画”と呼ぶ。幼少時代から一貫して続けている描くことへの執着と強い信念。“図画”は自身の人生日記のように綴られる。
難解に捉えられがちな現代の「美術」という枠から距離を置くプライベートな作品群から、鑑賞者は直感的に感じとることの大切さを再認識し、「描くこと=生きること」という本質的な場面に遭遇した。
本展は回顧展であると同時に、山形で描き続ける63歳のスガノサカエにとっても新たなスタートになった。

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「トワダビト」をテーマに、十和田に住まう人々に焦点をあてた公募作品を企画展示室および十和田市中心商店街にて展示する企画。本展では「モスクワ国際ビエンナーレ for Young Art “Qui Vive? “」(2010)に出展する等、今後の活躍が期待される若手現代美術家、清水玲が選ばれた。十和田という場所性、地域性、都市と地方、まちと個人、自己と他者との関係性について再考する展示となった。

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地域に新しい魅力をつくりだすアートの可能性を探る試みとして始まった「Arts Towadaオープンギャラリー」。1992年より雑誌、書籍、広告、テレビCMなど、多くの媒体でイラストレーションを描いてきた十和田市在住のイラストレーター、安斉将による展覧会。横浜から十和田への移住を表現した会場空間に、安斉の初期のペインティングやオブジェを展示。また、特別に設けられたアトリエ空間には不定期ながら作家本人が滞在し制作風景を公開した。

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マイケル・リンは、元来工業生産的なモチーフであった伝統的な台湾のテキスタイル模様を応用し、公共空間へと展開することで、模様本来の意味を転移させる新しい表現を確立した。十和田市の伝統工芸、南部裂織に着想を得たカフェスペースの大規模な常設作品《無題》は彼の手によるものである。本展でリンがコンセプトに掲げたのは、十和田滞在中に関心を寄せた中心商店街の「ふれあいホール(Mingling Space)」。地域の人々との協働作業=ミングリングから生まれたパッチワーク作品によって、あたたかくおだやかな融合の形を表現した。

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多摩美術大学在学中から自主制作で頭角を現し、その描写力と世界観が大きな注目を集めてきたアニメーション作家、加藤久仁生。2部構成の本展では、第1部で代表作『つみきのいえ』誕生のきっかけとなったスケッチや絵コンテ、同名絵本の原画を展示。第2部では本展のための新作短編『情景』ほか、『つみきのいえ』以降の新作絵本の原画イメージが公開された。また、会期中には館内で公開制作が行われ、制作プロセスに迫りながら、加藤独自の静謐で温かみのある表現に触れられるまたとない機会となった。

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十和田市現代美術館の建物の間から空を見上げたときに目に留まる2体の彫刻。常設展示の中でもひときわ不思議な存在感を放つこの《フライングマン・アンド・ハンター》の作者、森北伸にとって美術館で初となる個展では、最新作が展示された。空間を読み込み、素材の特性を活かした素朴な味わいの絵画や彫刻は森北の真骨頂。さまざまな関係性が「間ま」に漂い、詩的なユーモアに包まれた展示は、複雑な関係性の中で息苦しく、先が見えないいまの時代に自分と周囲を見つめ直すひとときを与えてくれるものとなった。

※Main image
《stranger in blue》 (アクリル絵具、綿布)
2017 130cm×80cm

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横尾忠則の青森県内では2度目の個展となる本展では、代表的な「Y字路シリーズ」の新作となる《TOWADA ROMAN》が話題を呼んだ。会期中には公開制作が行われ、2点の新作《たま、かえっておいで》を含む、愛猫たまを描いた連作39点を展示。さらに、1970年代初頭に日本各地への旅を通じて描かれた「日本原景旅行」シリーズから《十和田湖奥入瀬》(1973)がポスターに使用されたほか、商店街の通りを1キロメートルにわたりポスター、ステッカーのギャラリーとする館外展示、横尾の作品を参考にオリジナルのコラージュやミニポスターを創作するワークショップが催された。

※Main image
《横尾忠則 十和田ロマン展 POP IT ALL ポスター》2017
上から
《阿蘇山・草千里》1974 / 《十和田湖 奥入瀬》1973
2作品とも兵庫県立美術館蔵(参考作品)

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コレクター、キュレーター、ギャラリストとしての顔をもつアーティスト村上隆。自ら収集した陶芸作品のコレクションから28作家、約1,800点が展示された。本展は、千利休にはじまる茶の湯、柳宗悦を中心とした民藝運動、デパート陶芸からクラフトフェアまで、多様に展開する陶芸の世界から、日本の価値と美のありようを汲み上げる村上独自の陶芸史を開陳する内容となった。また、この企画は工芸、クラフトを現代の美術、芸術の中で重要な位置づけをもつものと捉える十和田市現代美術館が、その意義をより幅広く紹介することを目的に実現したものである。

※Main photo image : Mikiya Takimoto

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今期の展示は、作家やディレクターなど幅広く活躍する大宮エリー氏の「blossom」。白いキューブに映える、鮮やかな花々が描かれた絵画展で、十和田の自然の美しさ、喜びから生まれた絵は、木々や草など新たな光、命に気付かされます。

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衣服、テキスタイル、ジュエリーなど、自然素材を活かしたものづくりが高く評価されてきたヨーガン レール。本展では1970年代に日本へ移り住んだヨーガンが、石垣島の自宅近くの海辺に流れ着く廃棄物でつくりだした照明作品とともに、美しい海と汚れた海のコントラストを捉えた写真が展示された。プラスチックゴミを海鳥が食べたことで命を落とす現実を撮影し続けてきたアメリカの写真家クリス ジョーダンによる写真作品も特別展示された。人間の生活の根源にある自然にもう一度目を向けるための、海からのメッセージが込められている。

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「寒い冬、かつて家族が自然と集まる中心には“こたつ”がありました。[…]冬休みの子どもたち、農閑期のおじいさんおばあさん、みんながそれぞれの楽しみ方で参加して楽しめるアートプロジェクトです」(開催主旨文より)。6人の作家の呼びかけによる、制作参加型作品やワークショップを中心とした展覧会。会期中には、応募者のアイデアをもとに作家が立体作品を制作する「夢のこたつ」プロジェクトや、縫子を募集し、巨大こたつ掛けをつなぎ合わせるワークショップが開催され、作家と参加者が一体となって作品を完成させた。

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1985年に「写真の町」を宣言し、毎年夏に国際写真フェスティバル「東川フォトフェスタ」を開催している北海道上川郡東川町は、「写真の町東川賞」を創設し、30年以上にわたって国内外の写真作家を表彰し、作品を展示し、プリントの収集を続けてきた。十和田市現代美術館では「東川賞コレクション」から「地霊 呼び覚まされしもの」をテーマにした写真展を開催。写真家が土地に固有の守護精霊=地ゲニウス・ロキ霊と呼び交わすように写し撮った風景や人々の暮らしが一堂に会した。

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現代美術コレクターで精神科医の高橋龍太郎氏が1997年から収集した作品は2,000点以上に及ぶ。本展では草間彌生の貴重な初期作品から、奈良美智、村上隆をはじめとする1990年代後半から2000年代を代表する作家、Chim↑Pom、華雪、チームラボまで、絵画や映像、立体の作品を幅広く展示。時代を鋭敏に感じ取り、表現に反映させるアーティストたちの多様なメッセージが込められた展覧会となった。会期中には「発信する、つながる現代美術―美術館を核に新たな文化拠点を考えるシンポジウム」を開催。現代アートと美術館がもつ課題について活発な討議が行われた。

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「この星の力と対話をしながら、いたずらにも見えるような仕掛けを美術館にめぐらせます。この大地があれば、そこには無限の創造性があると信じて、みんなで心も体もまるごとジャーンプ!」(企画展主旨文より)。飛ぶ力を捨てずにこの星と生き続けているオトナ=芸術家たちによる「遊び」をテーマにした展覧会。本展では、鑑賞者が現代アートの多様な表現を通じて五感を駆使しながら創造性を発揮できる、体験型の展示構成が話題を呼ぶ展覧会となった。

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繰り返しの行為や運動は、それを誘発する力やそれによって現れる形に微妙な違いを生みながら、やがていままで見たことのない状況へ私たちを導いてゆく。「繰り返し」という凡庸な言葉の中には、営みや行為のあいだに生まれる「違い」がすでに折り込まれている。そうした「違い」の積み重なりによって、季節や風景は変わっていく。本展では、阿部幸子、高田安規子・高田政子、野村和弘の作品行為を重ね合わせ、繰り返される営みにより移り変わっていく風景を、鑑賞者と分かち合うことを試みた展示であった。

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青森に生まれ育ち、地域文化の調査・研究を重ねた民俗学者・田中忠三郎。本展では田中が生涯をかけて収集した衣服や民具の展示を通じて、人々が厳しい自然の中で生き抜くために生みだし、伝え、培ってきた生活文化を紹介した。また、独自の視点でさまざまな素材に向き合う現代作家の作品がこれらとともに展示された。モノを安易に消費し使い捨てる現代において、身の回りのものに手を加え、繰り返し使い継ぐ行いから、手わざの跡と生き方に触れることの意義を伝える展覧会となった。

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2010年に東京都千代田区とアーツ千代田3331の障がい者アート支援事業としてはじまった「ポコラート全国公募」展。同展は作品の公募を通して、人と人、人と作品、異なる感性に出会うことで、「人間」や「アート」についての問いかけを生みだしていくことをめざしてきた。2014年には、過去4回で寄せられたのべ4,820作品、2,292人の作家から54人が選ばれ、アート千代田3331で「ポコラート宣言2014」が開催された。ポコラート史上の傑作が並ぶ同展は、2014年10月から2015年1月にかけて、十和田市現代美術館をはじめとする全国3カ所(青森県、秋田県、高知県)に巡回した。

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災害時に立ち上がる創造力と愛に満ちた空間がどのようなものであるのか―。東日本大震災から3年が経過するのを機に開催された本展では、この問いについて、芸術作品や震災後に見られた活動を通して迫った。歴史家の北原糸子やレベッカ・ソルニットは、災害時において人々が社会制度に頼らず、見知らぬ人々と共同体を築く現象をある種の「ユートピア」と名づけた。復興が進み社会が元に戻ろうとする中で開催された本展は、そのような見知らぬ人同士が、あるモノやコトをきっかけに、ゆるやかにつながるコミュニケーションについて考える展覧会となった。

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開館5周年に際し、十和田市現代美術館を手がけた建築家、西沢立衛と妹島和世とのユニットSANAAの展覧会を開催。「展示物の形式はどれも、建築家が仕事の現場で日常的に用いるツールであり、建築表現にとって最も基本的な言語である。そのような基本的材料を用いることで、建築家の考え方や、建築創造現場におけるイマジネーションの広がりを示せれば」と考えた西沢は、美術館建築を中心に40点の模型やドローイング、映像で構成し、新しい時代の建築のあり方や地域とのかかわりを提示し、SANAAの建築世界の広がりを表現しようと試みた。

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美術館を中心とする市街地と、豊かな自然を有する奥入瀬・十和田湖を舞台に開催された十和田奥入瀬芸術祭。中でも十和田市現代美術館での展示は好評を博し、会期が延長されることとなった。本展は芸術祭を検証し、将来につなげるための試みとして、芸術祭が開催されるまでの制作風景や会期中のさまざまな記録を写真と映像で展示。また梅田哲也、コンタクトゴンゾ、志賀理江子が約5カ月にわたって制作した《水産保養所》のドキュメント映像もまちなかエリアで展示された。

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十和田市現代美術館開館5周年を記念し、美術館を中心とした市街地と、豊かな自然を有する奥入瀬、十和田湖を舞台に「時」をテーマに芸術祭が行われた。2011年3月11日に起きた千年に一度の規模といわれる東日本大震災は、ここ数百年のあいだ積み上げてきた人間の世界に大きな衝撃を与え、私たちの「時」の感覚を揺るがせた。一方、奥入瀬・十和田湖には数万年かけてかたちづくられた複雑で多様な生態系がある。さまざまな「時」を十和田奥入瀬に展開し、私たちの時代と芸術の関係、そしてこれからの可能性を提示した。

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開館5周年を記念して開催された「花」をテーマとする展覧会。常設展作家の草間彌生や髙橋匡太、チェ・ジョンファ、奈良美智をはじめとする計14組の作家が、美術館のみならず、まちなかでも作品の展示を行った。国際的なアーティストによるさまざまな花の表現は東日本大震災から2年を経たこの年、なお続く困難に立ち向かう新たな勇気の源泉となった。本展がオープンした4月下旬の十和田は折しも桜の季節。十和田市現代美術館のある官庁街通りの桜並木とともに、十和田のまちにはアートの花が咲き誇った。

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十和田市現代美術館を舞台にスタートした「びじゅつ」の学校は、「再入場自由」で「誰でも発表が可能」。フリーパスを購入(入学)すると会場内のオープンスタジオを自由に使え、いろいろな「部活動」に参加できる。「部長」を務めるのは多方面で活躍する作家陣。「部長」や「部員」がつくった作品は会期を通じて展示され、増殖し続けることとなった。ここで生まれた部活は、その後十和田市内のさまざまな場所へと広がりを見せ、美術館を触媒としながら、まちへと広がり、人をつなげる展覧会となった。

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青森県出身の国際的な美術作家、奈良美智の個展を開催。作家の多様な活動を本格的に紹介する本展では、絵画やドローイング、立体作品など初期の作品から、新たな作品世界をうかがわせる最新作まで、数多くの作品が展示された。また、会期中には本展を機に常設作品となった《夜露死苦ガール2012》の制作も行われ、奈良が生みだす挑戦的な、あるいは憂いを帯びた目をもつ子どもや、ユーモラスでありながら、どこかさみしげな動物たちは多くの来場者を惹きつけた。


展示風景

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2012年9月から約4カ月にわたり開催された奈良美智の個展「青い森の ちいさな ちいさな おうち」の会期中には、同展と連動し、「青い森のちいさな美術部」プロジェクトを実施。公募で選ばれた若手アーティストが部長・奈良美智、顧問・藤浩志(アーティスト、当館副館長[当時])とともに、十和田市内での2度にわたる合宿を通じて作品制作を行った。本展はその成果発表の場であり、十和田のまちなかへと展覧会場を展開するとともに、十和田市現代美術館がめざす、地域に根差した活動をさらに深めるものとなった。

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自然とアートをテーマにしたArts Towada 奥入瀬プロジェクトが奥入瀬渓流館を起点としてゆるやかに始まります。2008年4月に創造的活動の拠点として十和田市にArts Towada/十和田市現代美術館が開館して5年。その活動が奥入瀬・焼山・十和田湖エリアに拡がる可能性を模索しはじめています。休廃業した遊休施設を利用したアートプロジェクトの可能性を含め、自然の深い十和田奥入瀬エリアに対峙し、人間の創造的行為はいったいどこに向かうべきなのか、それを探り深めるデモンストレーションが始まります。

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将来的に十和田奥入瀬に関わり作品制作や表現活動を志すアーティスト、十和田奥入瀬でのアートプロジェクトをどのように作っていくかに興味を持つコーディネーター等を募集します。

ホスト:藤 浩志(美術家・十和田市現代美術館副館長)、新居 音絵(ナンジョウアンドアソシエイツ)

ゲストキュレーター:小澤 慶介(NPO法人AIT)、立木 祥一郎(インディペンデント・キュレーター、teco LLC.代表)、服部 浩之(青森公立大学 国際芸術センター青森)、森 司(東京文化発信プロジェクト)

●キャンプ日程

11/16 fri.
13:00 十和田市現代美術館集合
十和田市現代美術館見学オリエンテーション
送迎バスで星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルに移動
チェックイン、温泉、夕食
専門家によるレクチャーディスカッション&ワークショップ

11/17 Sat.
早朝ワークショップ
朝食
現場のリサーチツアー
ディスカッション&ワークショップ
昼食
現場のリサーチツアー
ディスカッション&ワークショップ
温泉、夕食
ディスカッション&ワークショップ

11/18 Sun.
早朝ワークショップ
朝食
チェックアウト
送迎バスで十和田市現代美術館へ移動
プレゼンテーション
13:00十和田市現代美術館解散

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栗林隆は一貫して人間と自然の関係性を表現の主題とし、「境界」をテーマに作品を展開してきた。ドイツ語で「湿地帯」を意味する常設作品《ザンプランド》もそのひとつ。本展は栗林の国内では初となる個展として、「水」をテーマにした大規模な新作インスタレーション4作品で構成された。さらに展示作品は美術館のみならず、まちなかにも展開し、より多様な表現を実現。われわれの自然への考え方を一変させた東日本大震災の後で、栗林の作品は、人間の根源的な感性や、環境に対する思いをあらためて深める契機となった。

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Arts Towadaがミッションとして掲げる「アートでまちを活性化する」ための展覧会として、十和田で滞在制作された作品を展示。アーティストと市民と美術館が交流することで得られるアートがもたらす新しい発見と気づきを、まちの元気のもとへと変えていく取り組みである。2012年は国内外で活動するアーティスト、みねお あやまぐちがプロポーザルにより選出され、制作と展示を行った。

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人間の存在とその肉体の神秘に関心をもち、ラテックスゴムなどの伸縮素材、ポンプ、ファンなどの動力を素材としたインスタレーション作品を制作する高木久美。
「かたち」をつくる彫刻家としての経歴をもちながら、空気の流れ、引力など、作家自身には制御できないけれども、「もの」に必ず働いているちからを取り入れながら、変化し、揺らぐ「かたち」をつくることに興味をもち、制作を続けている。
本展ではインスタレーション、彫刻、ビデオ作品などの新作を展示した。

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作家、演出家、画家として、多彩な活動が注目される大宮エリーの美術館では初となる個展。新作や代表的な旧作を含む絵画作品が多数展示された。雄大な自然を描いたものから身近な題材をモチーフとしたものまで、物語性を感じさせる、伸びやかで天性のバイブレーションがみなぎった作品群は多くの鑑賞者の感情に訴えかけた。会期中にはまちなかで「大宮エリーの商店街美術館」が開催されたほか、館内ではミュージシャンとのコラボレーションによるライブペインティングが実現。参加者は絵画と音楽が心地よく溶け合いながら作品が生まれるダイナミズムを体験した。

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十和田市現代美術館で9月25日(日)まで開催されている、大宮エリーの個展「シンシアリー・ユアーズ ― 親愛なるあなたの 大宮エリーより」にあわせて、十和田市内の商店街を中心に、美術館と街をつなぐプロジェクト「大宮エリーの商店街美術館」を同時開催しています。

「大宮エリーの商店街美術館」では、空き店舗でのインスタレーション作品の展示、シャッターペインティングを行うほか、商店街のアーケードを虹色に変える《虹のアーケード》の制作やイベントなど、美術館と街をつなぐ多彩なプログラムを実施します。

美術館を飛び出して、会場ごとに違った表情を見せる作品の数々。まさに商店街を美術館として大宮エリーの世界観を体感していただきます。

「街をひらき、街にひらかれた美術館」として活動してまいりました十和田市現代美術館が、街と協働する新たな試みです。


ギャラリー