お知らせ | 2026年08月27日 (木)
草間彌生さんの突然の訃報に、驚き、深い悲しみの中にいます。
心より、ご冥福をお祈りいたします。
草間さんが十和田市現代美術館のために制作くださった常設作品《愛はとこしえ十和田でうたう》(2010)は、官庁街通りをはさんだアート広場を彩り、長年人々に愛されています。
草間さんは、世界を代表する前衛芸術家であることを貫きながら、その作品が幅広い層に愛されている稀有な存在です。
カラフルな色や水玉などのモチーフを持つ作品は人々を元気づけ、本人の姿や人となりは、あこがれの対象として人々に親しまれてきました。
草間さんは、幼少期から幻聴や幻覚に悩む中で、水玉や網目模様をモチーフに絵を描きはじめました。自らの病や家族関係で苦しみ、1957年の渡米後は、敗戦国から来たこと、アジア人、女性という属性で差別を受けながらも前衛性を研ぎ澄まし、高い評価を得ました。1973年に帰国し、療養しながら制作する体制を整えた上で創作に邁進し、独自の世界を作品のみならず、小説においても開花させました。そして90年代以降、国内外でその作品や存在の唯一無二性が広く認知されました。彼女の生き様は、とりわけ女性にとって、社会にはりめぐらされた慣習や偏見、差別などの存在理由を根底から問い直し、そこから自由であることを高らかに謳い上げるものでした。
病気をはじめとする数多くの困難に直面しつづけた彼女を救ったのは、作品を制作することでした。自らが突き動かされるものに忠実に、呼吸をするようにドットや網目を描き続けること…生きることと創造することが不可分につながった人生をまっとうされた草間さんの生涯は、その意味で満ち足りたものだったと思います。
制作することによって生のよろこびを実感し、生き延びてきたといえるほど緊迫した日々の中から生み出された作品たちは、オブセッシブでありながら解放感があり、前衛的でありながら突き抜けたポップさやエネルギーにあふれています。
生きることは苦しい、しかし制作することで幸せを感じ、人々を幸せにする…作品には、草間さんが一貫して伝えようとした「愛」、そして「平和」への強いメッセージが込められています。
《愛はとこしえ十和田でうたう》は、十和田の皆さんへの、そして訪れる皆さんへの、草間さんからのかけがえのない贈り物(ギフト)です。
草間さんの愛は、十和田で息づいています。そして草間さんへの深い敬意と愛も、美術館スタッフ、十和田の人々に息づいています。
[追記] 私は1985年、原宿のファッションビルでアートを担当していた時、RAP(Radical Art Prize)というコンペを企画し、草間さんに審査員としてご参加いただきました。その時お会いした彼女のことを、今でもよく思い出します。
2026年8月27日 14時
十和田市現代美術館 館長 四方幸子
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