プロジェクト
「地域アート」とは、評論家の藤田直哉氏が2014年に発表した論考の中で、近年、多数開かれている地域名を冠した芸術祭等の美術イベントを指す言葉として提示されました。その言葉に誘発されるように「地域アート」やそれにまつわる問題について多数発言がなされ、一つの現象をつくりあげています。「地域アート」という言葉が、いろいろな立場から、賛否両論合わせて語られたことは、この領域に関わる当事者の多さを物語っています。
加えて「地域」という言葉には、住民やコミュニティ、自治体、事業体、そこに湧き起こる個人的な感情までもが含まれ、それを抱く「地域アート」という概念が、拡大解釈されながら語られているのではないかと考えます。「地域アート」と呼ばれる活動の形態も、国際芸術祭、地方芸術祭、アートプロジェクト、地方美術館のプロジェクト、ソーシャリー・エンゲージド・アート、サポーター活動、地域活性など、少しずつ重なりあいながら、異なる性質を持っています。それぞれ独立した成り立ちや様相を持つ概念を丁寧にすくい上げ、その意義、成果、可能性、問題点を洗い出すことによって、すべてがまとまって認知される現状に楔を打ち込むことが、本プロジェクトの目指すところです。
「地域アート」が語ろうとしていたものは何か。そして、その何かを「地域アート」と呼ぶべきなのか。「地域アート」と呼ばれる事象について、もう一度話をしてみたいと思います。
2018年度のトークを皮切りに、展覧会、様々な論者の文章をまとめたカタログ発行と続きます。
クロストーク 1日目
2018年11月3日(土)
登壇者:林曉甫 藤⽥直哉 ⾦澤韻 原⽥裕規(ファシリテーター)
三名の論者が、それぞれの仕事から「地域アート」という言葉について考察し、その後モデレーターを含めた意見交換により、この領域の射程を探りました。
クロストーク 2日目
2018年11月4日(日)
登壇者:藤井光 荒神明香[目] 南川憲二[目] 星野太(ファシリテーター)
土地・社会・人々についての深い考察に基づき制作してきたアーティストたちが、自身の活動を紹介し、モデレーターとの対話を通してその意義を掘り下げました。
概要
十和田市現代美術館が2018年から取り組む〈「地域アート」はどこにある?〉プロジェクトの一環として本展は開催された。地域の人々と協働しながら実験的な作品を展開する北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志による展覧会。北澤とNadegata Instant Partyは、新作を美術館と十和田のまちに展開し、藤はキュレーターの金澤と自身の学生時代をモデルにした小説を発表した。タイトルの「ウソ」とは、芸術表現における虚構やフィクションを意味し、それらをコミュニティにもち込むことで、現実の世界に変化をもたらす作家たちの実践が間近に見られる展示となった。
Videography:KAZUYA ISHIKAWA
日時
2019年4月13日(土)~9月1日(日)
参加アーティスト
藤 浩志 ふじ・ひろし
1960年、鹿児島生まれ。美術家。京都市立芸術大学大学院修了。パプアニューギニア国立芸術学校講師、都市計画事務所、藤浩志企画制作室、十和田市現代美術館館長を経て秋田公立美術大学大学院教授・副学長。国内外のアートプロジェクト、展覧会に出品多数。1992年藤浩志企画制作室を設立し「地域」に「協力関係・適正技術」を利用した手法でイメージを導き出す表現の探求をはじめる。
※photo by kuniya oyamada
Nadegata Instant Party (中崎 透+山城 大督+野田 智子)
ナデガタ・インスタント・パーティー
中崎透、山城大督、野田智子の3名で構成される「本末転倒型オフビートユニット」。2006年より活動開始。地域コミュニティにコミットし、その場所において最適な「口実」を立ち上げることから作品制作を始める。口実化した目的を達成するために、多くの参加者を巻き込みながら、ひとつの出来事を「現実」としてつくりあげていく。「口実」によって「現実」が変わっていくその過程をストーリー化、映像や演劇的手法、インスタレーションなどを組み合わせながら作品を展開している。
北澤 潤 きたざわ・じゅん
美術家。1988年東京生まれ、ジョグジャカルタ拠点。
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。合同会社北澤潤八雲事務所代表。さまざまな国や地域でのフィールドワークを通して「ありえるはずの社会」の姿を構想し、多様な人びととの立場を越えた協働によるその現実化のプロセスを芸術実践として試みる。2013年よりIPA – Institute for Public Art 研究員(上海)、2016年に米経済誌フォーブス「30 Under 30 Asia」アート部門選出。2016年から2017年にかけて国際交流基金アジアセンター・フェロー(インドネシア)。
※photo by CULTURE
参考作品
「地域アートはどこにある?」プロジェクト書籍
来場者4万人突破! 大都市から離れた美術館が多くの来場者を集めた展覧会「ウソから出た、まこと」展。
北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志という3組のアーティストを迎えたこの展覧会は、作品展示にとどまらず、十和田市の住民を巻き込んだ「地域アートはどこにある?」というプロジェクトに位置付けられていました。
地域におけるアートは住民、アーティスト、行政など様々な関係者とそれぞれの思考が混ざり合って成り立っています。
それは「地域アート」という言葉で語れることなのか。
展示紹介やプロジェクト中のクロストークを収録、十和田という現場の実践と思考の軌跡・論稿を、住民や様々なゲストとともにまとめた1冊です
[書籍]
「地域アートはどこにある?」
サイズ:A5サイズ(240ページ) 並製
言語:日本語
発行:堀之内出版
販売価格:3,500円(税別)
書店販売日:2020年3月30日
ISBN:978-4-909237-47-7
Cコード:C0070 一般 単行本 芸術総記
十和田市現代美術館(編集)、小川 希(著/文)、金澤 韻(著/文)、北澤 潤(著/文)、木ノ下 智恵子(著/文)、小池 一子(著/文)、里村 真理(著/文)、高須 咲恵(著/文)、中村 政人(著/文)、ナデガタインスタントパーティー(著/文)、中崎 透(著/文)、山城 大督(著/文)、野田 智子(著/文)、原田 裕規(著/文)、林 曉甫(著/文)、日比野 克彦(著/文)、藤井 光(著/文)、藤 浩志(著/文)、藤田 直哉(著/文)、星野 太(著/文)、見留 さやか(著/文)、ミヤタ ユキ(著/文)、目[mé](著/文)、山出 淳也(著/文)、山崎 亮(著/文)
取り扱い:十和田市現代美術館カフェ&ショップ「cube」、全国主要書店
※オンラインでも販売しております。
お問い合わせ:
十和田市現代美術館カフェ&ショップ「cube」
Tel: 0176-22-7789
E-mail: cube@towadaartcenter.com