建物―ブエノスアイレス

床と水平に置かれたヨーロッパ風の建物のファサード(外観)。人々がその上で自由にポーズをとると、斜めに立ち上がる大きな鏡には、重力から解き放たれたような光景として映し出されます。手前のスペースからはその様子を客観的に見ることができ、ファサード上の人々は、その視線を感じながら「演じる」こととなります。複数の視点の存在が、作品の中に入り込む体験だけでなく、その場の人同士の見る/見られるといった相互関係をも生み出します。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・トーク


学芸員の研究ノート

建物―ブエノスアイレス

十和田湖にあった一艘の古びた木船。それをつなぎ止めるかのように無数の赤い糸が、まわりに張り巡らされています。船は、未知の場所へ導くと同時に、水上を渡るという点で死と隣り合わせの存在であると塩田は言います。船、そして1本1本を捉えることができないほど何層にも編まれた糸からは、場所やものに宿る記憶や人の縁、死といった、私たちの「生」に連なる目には見えない不確かな存在を想起させられます。

撮影:小山田邦哉
©2021 JASPAR, Tokyo and Shiota Chiharu


作品情報


アーティスト・インタビュー

建物―ブエノスアイレス

美術館エントランスの床一面を、あざやかな色彩の直線が幾何学的な構成で覆い尽くしています。一見プレーンな白い箱のようにも見える室内ですが、窓枠や床の送風口といった空間の外エッジ枠を縫うように始まるパターンは、色と幅の強弱で躍動感を生みながら中央へ向かって集まっていき、まるでリズムが鳴り響くかのように空間を変容させています。

撮影:小山田邦哉
Courtesy of The Artist and The Modern Institute/Toby Webster Ltd, Glasgow


作品情報

建物―ブエノスアイレス

皮膚のしわやたるみ、透き通って見える血管、髪の毛の1本1本まで再現した克明なディテール。対照的に、高さ約4mという非現実的なスケールがその存在の異様さを際立たせます。ミュエクは、老いや孤独といった人間の普遍的なもろさが垣間見える瞬間を捉えた彫刻で知られています。角度によって厳しそうにも優しそうにも見える表情や虚空を見つめる静かなたたずまいが、見る人の共感や想像を促します。

撮影:小山田邦哉
Courtesy Anthony d’Offay, London


作品情報

建物―ブエノスアイレス

小さな庭の大きな岩の上に1本の松の木があります。下方に大きく垂れた枝先に青葉を茂らせ、長く深く伸びた根は足元の岩にしがみついています。日本の伝統的な造園様式に基づいて表現されたこの作品は、厳しい自然環境を想定し、そこに根ざした松がこのような形状に至るまでの物語を想像しつくられました。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・トーク

建物―ブエノスアイレス

山極による作品《ちいさなおとしもの》《ひとつはふたつ》《ぼくはきみになれない》《なんにもない話》は、美術館の「隙間」に小さくひっそりと点在しています。
「展示室と展示室のあいだを歩きながら、見上げて、見下ろして、立ち止まって、引き返し、行ったり来たりしてみると、ある一時点という出会いがあるかもしれません。」山極 満博

撮影:小山田邦哉


作品


作品情報


アーティスト・トーク

建物―ブエノスアイレス

暗闇の中、薄明かりに目を凝らすと見えてくるのは、漆黒のダイナーと、果てしなく続く高速道路の風景。不自然なほど人けのない夜の世界にオレンジ色の街灯がもの憂げに光り、流れ続ける古いラジオのくぐもった音が、かえって外界から隔絶された印象を与えます。実寸大で再現された虚構の店内空間から、錯視を利用しつくられた窓外のパノラマを眺める体験は、見る人の時間や距離、場所の感覚をかき乱します。

撮影: Hans Op de Beeck
Courtesy of Xavier Hufkens, Brussels


作品情報


アーティスト・インタビュー

建物―ブエノスアイレス

透明なバルーンの集合体が、網目状に張り巡らされた紐で空中につなぎ止められています。人が中に入ることを想定してつくられた本作は、国境や領土という概念から解放され、雲のように形を変えながら空に浮かぶという、サラセーノが構想する新たな都市のあり方を提示しています。同時に、互いにしっかりと結びつくバルーンの姿は、地球環境の多様性と相互作用性、そして自然界の生態系の様相を示唆しているようでもあります。

撮影:小山田邦哉


作品情報


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

中庭に配置された3つの作品。玉石を川に見立てた《三途の川》がつなぐのは、京都の古寺で使用されていた釣り鐘を用いた《平和の鐘》と、1990年代からオノが世界の各地で行ってきたプロジェクト《念願の木》です。川をまたいで鐘をつき、願いを書いた短冊を木に吊るすよう観客を誘うことで、オノは、形のない人々の想いや行為自体を作品へと変えます。

撮影:小山田邦哉
© Yoko Ono All Rights Reserved


作品


作品情報


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

建物と建物の間に設置された人物をかたどった2体の彫刻。片方は、壁に手足をつっぱるように広げ、おそるおそる空を飛んでいるかのようです。もう一方は、その様子を橋の上から眺め、彼をつかまえようとしているのでしょうか。薄い紙をくしゃくしゃに丸めて広げたような形状や、空けられた無数の穴が空気や光を捉え、時刻や天候、角度によって異なる表情を見せてくれます。

撮影:岩崎マミ


作品情報


アーティスト・トーク


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

無機質な素材でつくられた幾何学的な形状の彫刻。中に入ると、その力強い見た目とは対照的に、柔らかな青いネオンの光と浮遊感漂う音色が空間を満たしています。女性作家であるアラエズは、男性中心につくり上げられた伝統的な彫刻表現や、強さ、硬さなどの、いわゆる男らしいとされるイメージのあり方に疑問を投げかけてきました。強靭さとはかなさをあわせもつアラエズの作品は、いつ傷つき壊れるとも知れない弱さやもろさを含みもつ、私たちの本質的な姿を映し出すようです。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・トーク


アーティスト・インタビュー


パフォーマンス記録映像

建物―ブエノスアイレス

部屋の中には白で統一された無機質な家具が置かれ、天井には人の頭が入るくらいの穴がぽっかりと空いています。タイトルの《ザンプランド》は、ドイツ語で「湿地帯」という意味です。靴を脱ぎ、イスに上り、天井裏をのぞいてみてください。下からは想像もつかない景色が目の前に広がります。ふたつの世界を越境することで、一方からだけでは見つけられなかった「何か」にも出会うことができるかもしれません。

撮影:岩崎マミ


作品情報


アーティスト・トーク


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

赤、オレンジ、半透明のグラデーションで配色された無数の人形が、かたぐるまで連なり、シャンデリアのように天井から吊られています。同じポーズでつながる人形の連続性は、世代から世代へと知識や記憶が連綿と受け継がれていることを表現しています。作品タイトルは「因果関係」を意味し、私たちの生が、他者の生との絶え間ない連鎖の中にあり、過去や未来とも呼応していることを想起させます。

撮影:小山田邦哉
Courtesy the Artist and Lehmann Maupin Gallery, New York and Hong Kong


作品情報


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

屋上まで続く階段空間に、あざやかな色と形がひしめき重なり合っています。ところどころに目玉を思わせるような絵柄が描かれており、まるで生き物たちがこちらをうかがっているようにも感じられます。徐々に変化する色調を追って、市内の風景を望む屋上へ出ると、空と呼応するような水色が足もと一面に広がります。エレーロが十和田に滞在し、この地で感じた印象を交えながら即興的に描いた2つの作品です。

《ウォール・ペインティング》
撮影:小山田邦哉


作品


作品情報

建物―ブエノスアイレス

まるで一部を切り取ったかのように、型を取り精巧に現された森。小道や切り株などから人の痕跡が感じられますが、見上げるような高さにあるため全体を把握することはできません。木立を照らす舞台装置のような照明は、自然を見通そうと光を持ち込む人間の欲望を表す一方で、かえって闇の深さを強調するようでもあり、夜の静寂に包まれた森が喚起する畏敬の念を思い起こさせます。人間が風景や自然環境に対して抱く相反する感情を読み取ることができるでしょう。

撮影:小山田邦哉
Courtesy the artist with the kind support of the Forestry Commission, Bedgebury Pinetum, England


作品情報


アーティスト・インタビュー

建物―ブエノスアイレス

自動ドアから部屋に足を踏み入れると、カーペット張りの床に角のない壁で囲まれた、白く柔らかな空間が広がります。モニターに映る赤青緑の光線と流れる電子音。床のミラーボールが光を乱反射する中、白毛の幻獣が、見えない何かを見つめるかのように横たわっています。古典的なSF映画『2001年宇宙の旅』などから着想を得た本作は、「いまここ」を離れ、過去に思い描かれた未来の姿が閉じ込められた、宙吊りの時空間へと人々を迷い込ませるかのようです。

撮影:小山田邦哉


作品情報

建物―ブエノスアイレス

カフェの床には、色とりどりの花柄を組み合わせた絵画が、じゅうたんのように広がっています。パッチワークのようなこの作品は、古布を裂いて新しい布を織る、十和田の伝統工芸「南部裂さき織おり」に着想を得ています。美術は高尚なものではなく、日常の中に存在するものと考えるリンにより、人々が交流し新たな関係を織りなす空間にふさわしい作品が生み出されました。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・インタビュー


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

版画や、切り絵を思わせるような太くはっきりとしたモノクロの線で描かれた、りんごの木のある牧歌的な風景。モリソンは、ルネサンスの木版画など写実的な図像からアニメーションまで、時代やジャンルの異なるさまざまな絵から、自然のモチーフをコンピューターに取り込み、縮尺や比率を編集したものを組み合わせて制作しています。こうしてつくり出された架空の風景は、親しえる絵柄で描かれていながら、どこか不穏さも感じさせます。

撮影:小山田邦哉
Courtesy Alison Jacques Gallery, London


作品情報

建物―ブエノスアイレス

外壁に描かれた、ひとりの子ども。斜めの方向を見つめる鋭い視線や結んだ口元は、ニヤリと笑っているようにも、思いを飲み込んでいるようにも見えます。ところどころ破れた服でだらりと腕を垂らし、足を組みながら立つ姿からは、脱力感や気だるさも感じられます。シンプルな線とデフォルメされた輪郭で描かれたこの子どもは、見る人によってさまざまに表情を変え、まるで私たちの内面や記憶、誰かの面影を浮かび上がらせる写し鏡のようでもあります。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・トーク


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

What you have あなたが持っているもの
What you want あなたが欲しいもの
What you need あなたが必要なもの
本の見開きページのように描かれたパステルカラーの色面に、3行の短い詩が並んでいます。
ローゼンダールは松尾芭蕉の俳句「古池や 蛙飛び込む 水の音」を読み、色あせない言葉の力に強く引かれたと言います。限られた文字数で豊かな情景を表現する日本の俳句をもとに「Haiku」シリーズとして制作された本作は、シンプルな言葉の連なりであるがゆえに、見る人それぞれのイメージを喚起させます。

2018年に開催した企画展「ラファエル・ローゼンダール: ジェネロシティ 寛容さの美学」で展示された作品です。


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

戦前、旧陸軍軍馬補充部があった官庁街通りは、「駒街道」という愛称で市民に親しまれています。通りに面した広場には、色とりどりの花で覆われた1頭の馬が、今まさに走り出さんと力強く立ち上がっています。美術館を訪れた人々を迎えるウェルカムブーケでもある《フラワー・ホース》は、馬とともにあった十和田の歴史や平和への祈り、未来への希望をも象徴しているかのようです。

撮影:小山田邦哉


作品情報


アーティスト・インタビュー


関連展覧会

建物―ブエノスアイレス

巨大化した虫型のロボットを思わせる真っ赤な体。地面を強くつかむように立つ長い足、鋭いあごに吊り上がった大きな目など、どこか攻撃的ないでたちでこちらを見つめています。永世中立国である中米のコスタリカに生息し「農耕をするアリ」とも呼ばれるハキリアリ(学名:Atta cephalotes)をモチーフとしたこの作品は、地球上の資源を奪い続け、大量消費を止めない人間に警告を与えているようでもあります。

撮影:小山田邦哉


作品情報

建物―ブエノスアイレス

直方体の集まりで構成された美術館の建物を、さまざまな色で照らす光の作品。日中は白い立体として現れる建築が、夜間には、その外壁の形を際立たせる光によって、面の連なりとして再構成されます。十和田の豊かな自然から着想された季節ごとに異なる光のプログラムが、街を行き交う人々の夜を彩ります。

撮影:北村光隆


作品情報


アーティスト・トーク