床と水平に置かれたヨーロッパ風の建物のファサード(外観)。人々がその上で自由にポーズをとると、斜めに立ち上がる大きな鏡には、重力から解き放たれたような光景として映し出されます。手前のスペースからはその様子を客観的に見ることができ、ファサード上の人々は、その視線を感じながら「演じる」こととなります。複数の視点の存在が、作品の中に入り込む体験だけでなく、その場の人同士の見る/見られるといった相互関係をも生み出します。
撮影:小山田邦哉
※美術館建物の裏にある駐車場奥の展示室に設置されているため、チケット購入後に外へ出ていただく必要がございます。館内には再入場可能です。
制作年:2012/2021
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):626×1050×700 cm
十和田湖にあった一艘の古びた木船。それをつなぎ止めるかのように無数の赤い糸が、まわりに張り巡らされています。船は、未知の場所へ導くと同時に、水上を渡るという点で死と隣り合わせの存在であると塩田は言います。船、そして1本1本を捉えることができないほど何層にも編まれた糸からは、場所やものに宿る記憶や人の縁、死といった、私たちの「生」に連なる目には見えない不確かな存在を想起させられます。
撮影:小山田邦哉
©2021 JASPAR, Tokyo and Shiota Chiharu
制作年:2021
素材:木製の船、赤い毛糸
サイズ(W×D×H):544.8×852.7×465 cm
インタビュアー:見留さやか
作成日:2022 年3 月
美術館エントランスの床一面を、あざやかな色彩の直線が幾何学的な構成で覆い尽くしています。一見プレーンな白い箱のようにも見える室内ですが、窓枠や床の送風口といった空間の外エッジ枠を縫うように始まるパターンは、色と幅の強弱で躍動感を生みながら中央へ向かって集まっていき、まるでリズムが鳴り響くかのように空間を変容させています。
撮影:小山田邦哉
Courtesy of The Artist and The Modern Institute/Toby Webster Ltd, Glasgow
制作年:2008
素材:ビニールテープ
サイズ(W×D×H):868×1209 cm
皮膚のしわやたるみ、透き通って見える血管、髪の毛の1本1本まで再現した克明なディテール。対照的に、高さ約4mという非現実的なスケールがその存在の異様さを際立たせます。ミュエクは、老いや孤独といった人間の普遍的なもろさが垣間見える瞬間を捉えた彫刻で知られています。角度によって厳しそうにも優しそうにも見える表情や虚空を見つめる静かなたたずまいが、見る人の共感や想像を促します。
撮影:小山田邦哉
Courtesy Anthony d’Offay, London
制作年:2007
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):155×110×405 cm
小さな庭の大きな岩の上に1本の松の木があります。下方に大きく垂れた枝先に青葉を茂らせ、長く深く伸びた根は足元の岩にしがみついています。日本の伝統的な造園様式に基づいて表現されたこの作品は、厳しい自然環境を想定し、そこに根ざした松がこのような形状に至るまでの物語を想像しつくられました。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:FRP
サイズ(W×D×H):658×723×270 cm
【げんびサポーター限定トークイベント】
第10回目 山本修路《松其ノ三十二》
2024年3月10日 収録
山極による作品《ちいさなおとしもの》《ひとつはふたつ》《ぼくはきみになれない》《なんにもない話》は、美術館の「隙間」に小さくひっそりと点在しています。
「展示室と展示室のあいだを歩きながら、見上げて、見下ろして、立ち止まって、引き返し、行ったり来たりしてみると、ある一時点という出会いがあるかもしれません。」山極 満博
撮影:小山田邦哉
《ぼくはきみになれない》
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):φ56×91 cm
《なんにもない話》
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):50×60×65 cm
《ひとつはふたつ》
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):17×290×15 cm
《ちいさなおとしもの》
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):φ18×25 cm
【げんびサポーター限定トークイベント】
山極満博《あっちとこっちとそっち》
2022年9月4日収録
暗闇の中、薄明かりに目を凝らすと見えてくるのは、漆黒のダイナーと、果てしなく続く高速道路の風景。不自然なほど人けのない夜の世界にオレンジ色の街灯がもの憂げに光り、流れ続ける古いラジオのくぐもった音が、かえって外界から隔絶された印象を与えます。実寸大で再現された虚構の店内空間から、錯視を利用しつくられた窓外のパノラマを眺める体験は、見る人の時間や距離、場所の感覚をかき乱します。
撮影: Hans Op de Beeck
Courtesy of Xavier Hufkens, Brussels
制作年:2004 / 2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):982×1417×618 cm
ハンス・オプ・デ・ベーク インタビュー(PDF)
インタビュアー : ⾒留さやか ( ⼗和⽥市現代美術館 )
実施⽇ : 2022年8⽉31⽇
透明なバルーンの集合体が、網目状に張り巡らされた紐で空中につなぎ止められています。人が中に入ることを想定してつくられた本作は、国境や領土という概念から解放され、雲のように形を変えながら空に浮かぶという、サラセーノが構想する新たな都市のあり方を提示しています。同時に、互いにしっかりと結びつくバルーンの姿は、地球環境の多様性と相互作用性、そして自然界の生態系の様相を示唆しているようでもあります。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:空気、ネット、楕円形のピロー
サイズ(W×D×H):591×869×630 cm
中庭に配置された3つの作品。玉石を川に見立てた《三途の川》がつなぐのは、京都の古寺で使用されていた釣り鐘を用いた《平和の鐘》と、1990年代からオノが世界の各地で行ってきたプロジェクト《念願の木》です。川をまたいで鐘をつき、願いを書いた短冊を木に吊るすよう観客を誘うことで、オノは、形のない人々の想いや行為自体を作品へと変えます。
撮影:小山田邦哉
© Yoko Ono All Rights Reserved
《念願の木》
制作年:1996/2008
素材:リンゴの木、テーブル、イス
《三途の川》
制作年:1996/2008
素材:石
《平和の鐘》
制作年:2008
素材:半鐘
サイズ(W×D×H):1453×1543 cm
建物と建物の間に設置された人物をかたどった2体の彫刻。片方は、壁に手足をつっぱるように広げ、おそるおそる空を飛んでいるかのようです。もう一方は、その様子を橋の上から眺め、彼をつかまえようとしているのでしょうか。薄い紙をくしゃくしゃに丸めて広げたような形状や、空けられた無数の穴が空気や光を捉え、時刻や天候、角度によって異なる表情を見せてくれます。
撮影:岩崎マミ
制作年:2008
素材:鉄
《フライングマン》
サイズ(W×D×H):207×210×50 cm
《ハンター》
サイズ(W×D×H):418×96×120 cm
【げんびサポーター(ボランティア)限定トークイベント】
森北伸《フライングマン・アンド・ハンター》
2023年2月25日 収録
無機質な素材でつくられた幾何学的な形状の彫刻。中に入ると、その力強い見た目とは対照的に、柔らかな青いネオンの光と浮遊感漂う音色が空間を満たしています。女性作家であるアラエズは、男性中心につくり上げられた伝統的な彫刻表現や、強さ、硬さなどの、いわゆる男らしいとされるイメージのあり方に疑問を投げかけてきました。強靭さとはかなさをあわせもつアラエズの作品は、いつ傷つき壊れるとも知れない弱さやもろさを含みもつ、私たちの本質的な姿を映し出すようです。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:鉄、ガラス、ネオン
サイズ(W×D×H):370×768×320 cm
【げんびサポーター限定トークイベント】
第九回目 アナ・ラウラ・アラエズ《光の橋》
2023年10月1日 収録
インタビュアー:中川千恵子 (十和田市現代美術館)
実施日:2022 年2 月15 日
2019年12月10日に行われた当館での作家のパフォーマンスの記録映像です。
部屋の中には白で統一された無機質な家具が置かれ、天井には人の頭が入るくらいの穴がぽっかりと空いています。タイトルの《ザンプランド》は、ドイツ語で「湿地帯」という意味です。靴を脱ぎ、イスに上り、天井裏をのぞいてみてください。下からは想像もつかない景色が目の前に広がります。ふたつの世界を越境することで、一方からだけでは見つけられなかった「何か」にも出会うことができるかもしれません。
撮影:岩崎マミ
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):349×569×415 cm
【げんびサポーター(ボランティア)限定トークイベント】
栗林隆《ザンプランド》
2021年12月5日 収録
赤、オレンジ、半透明のグラデーションで配色された無数の人形が、かたぐるまで連なり、シャンデリアのように天井から吊られています。同じポーズでつながる人形の連続性は、世代から世代へと知識や記憶が連綿と受け継がれていることを表現しています。作品タイトルは「因果関係」を意味し、私たちの生が、他者の生との絶え間ない連鎖の中にあり、過去や未来とも呼応していることを想起させます。
撮影:小山田邦哉
Courtesy the Artist and Lehmann Maupin Gallery, New York and Hong Kong
制作年:2008
素材:アクリル、ステンレスワイヤー
サイズ(W×D×H):508×713×809 cm
屋上まで続く階段空間に、あざやかな色と形がひしめき重なり合っています。ところどころに目玉を思わせるような絵柄が描かれており、まるで生き物たちがこちらをうかがっているようにも感じられます。徐々に変化する色調を追って、市内の風景を望む屋上へ出ると、空と呼応するような水色が足もと一面に広がります。エレーロが十和田に滞在し、この地で感じた印象を交えながら即興的に描いた2つの作品です。
《ウォール・ペインティング》
撮影:小山田邦哉
《ウォール・ペインティング》
制作年:2008
素材:塗料
サイズ(W×D×H):324×574×1598 cm
《ミラー》
制作年:2008
素材:塗料
サイズ(W×D×H):1374×970 cm
まるで一部を切り取ったかのように、型を取り精巧に現された森。小道や切り株などから人の痕跡が感じられますが、見上げるような高さにあるため全体を把握することはできません。木立を照らす舞台装置のような照明は、自然を見通そうと光を持ち込む人間の欲望を表す一方で、かえって闇の深さを強調するようでもあり、夜の静寂に包まれた森が喚起する畏敬の念を思い起こさせます。人間が風景や自然環境に対して抱く相反する感情を読み取ることができるでしょう。
撮影:小山田邦哉
Courtesy the artist with the kind support of the Forestry Commission, Bedgebury Pinetum, England
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):950×560×470 cm
マリール・ノイデッカー インタビュー(PDF)
インタビュアー : 外山有茉 ( ⼗和⽥市現代美術館 )
実施⽇ : 2022年7⽉22⽇
自動ドアから部屋に足を踏み入れると、カーペット張りの床に角のない壁で囲まれた、白く柔らかな空間が広がります。モニターに映る赤青緑の光線と流れる電子音。床のミラーボールが光を乱反射する中、白毛の幻獣が、見えない何かを見つめるかのように横たわっています。古典的なSF映画『2001年宇宙の旅』などから着想を得た本作は、「いまここ」を離れ、過去に思い描かれた未来の姿が閉じ込められた、宙吊りの時空間へと人々を迷い込ませるかのようです。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):529×838×450 cm
カフェの床には、色とりどりの花柄を組み合わせた絵画が、じゅうたんのように広がっています。パッチワークのようなこの作品は、古布を裂いて新しい布を織る、十和田の伝統工芸「南部裂さき織おり」に着想を得ています。美術は高尚なものではなく、日常の中に存在するものと考えるリンにより、人々が交流し新たな関係を織りなす空間にふさわしい作品が生み出されました。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:アクリル塗料
サイズ(W×D×H):893×1314 cm
インタビュアー: 中川千恵子(十和田市現代美術館)
実施日: 2024年1月31日
版画や、切り絵を思わせるような太くはっきりとしたモノクロの線で描かれた、りんごの木のある牧歌的な風景。モリソンは、ルネサンスの木版画など写実的な図像からアニメーションまで、時代やジャンルの異なるさまざまな絵から、自然のモチーフをコンピューターに取り込み、縮尺や比率を編集したものを組み合わせて制作しています。こうしてつくり出された架空の風景は、親しえる絵柄で描かれていながら、どこか不穏さも感じさせます。
撮影:小山田邦哉
Courtesy Alison Jacques Gallery, London
制作年:2008
素材:カッティングシート
サイズ(W×D×H):2048×1000 cm
外壁に描かれた、ひとりの子ども。斜めの方向を見つめる鋭い視線や結んだ口元は、ニヤリと笑っているようにも、思いを飲み込んでいるようにも見えます。ところどころ破れた服でだらりと腕を垂らし、足を組みながら立つ姿からは、脱力感や気だるさも感じられます。シンプルな線とデフォルメされた輪郭で描かれたこの子どもは、見る人によってさまざまに表情を変え、まるで私たちの内面や記憶、誰かの面影を浮かび上がらせる写し鏡のようでもあります。
撮影:小山田邦哉
制作年:2012
素材:カッティングシート
サイズ(W×D×H):2048×1000 cm
げんびサポーター限定 常設作品関連プログラム
奈良美智 トーク
日時:2022年12月4日
What you have あなたが持っているもの
What you want あなたが欲しいもの
What you need あなたが必要なもの
本の見開きページのように描かれたパステルカラーの色面に、3行の短い詩が並んでいます。
ローゼンダールは松尾芭蕉の俳句「古池や 蛙飛び込む 水の音」を読み、色あせない言葉の力に強く引かれたと言います。限られた文字数で豊かな情景を表現する日本の俳句をもとに「Haiku」シリーズとして制作された本作は、シンプルな言葉の連なりであるがゆえに、見る人それぞれのイメージを喚起させます。
2018年に開催した企画展「ラファエル・ローゼンダール: ジェネロシティ 寛容さの美学」で展示された作品です。
《RR Haiku 061》は、株式会社The Chain Museumの「ミュージアム」の1プロジェクトとして、期間を限定し展示されています。
The Chain Museumは、「リアルとデジタルを相互に駆使し、アートやアーティストが世界と直接つながることを希求する」ことを目的として、2018年に設立されました。主な事業として、鑑賞者ひとりひとりがアート作品の感想を伝え、共有したり、アーティストを直接支援できるアート・コミュニケーションプラットフォーム「ArtSticker」を運営しています。また、さまざまなジャンルのアーティストとコラボレーションし、これまでの美術館の枠を超え、作品を通してつながっていく「ミュージアム」を、オフィスや商業施設、美術館の一角など、日常の中に生み出しています。
※The Chain Museumはこちら。
戦前、旧陸軍軍馬補充部があった官庁街通りは、「駒街道」という愛称で市民に親しまれています。通りに面した広場には、色とりどりの花で覆われた1頭の馬が、今まさに走り出さんと力強く立ち上がっています。美術館を訪れた人々を迎えるウェルカムブーケでもある《フラワー・ホース》は、馬とともにあった十和田の歴史や平和への祈り、未来への希望をも象徴しているかのようです。
撮影:小山田邦哉
制作年:2008
素材:鉄、FRP
サイズ(W×D×H):167×488×550 cm
インタビュアー:外⼭有茉(⼗和⽥市現代美術館)
実施⽇:2023年10⽉19⽇
巨大化した虫型のロボットを思わせる真っ赤な体。地面を強くつかむように立つ長い足、鋭いあごに吊り上がった大きな目など、どこか攻撃的ないでたちでこちらを見つめています。永世中立国である中米のコスタリカに生息し「農耕をするアリ」とも呼ばれるハキリアリ(学名:Atta cephalotes)をモチーフとしたこの作品は、地球上の資源を奪い続け、大量消費を止めない人間に警告を与えているようでもあります。
撮影:小山田邦哉
素材:鉄、FRP
サイズ(W×D×H):601×624×395 cm
協力|木下徹哉(造形師)
直方体の集まりで構成された美術館の建物を、さまざまな色で照らす光の作品。日中は白い立体として現れる建築が、夜間には、その外壁の形を際立たせる光によって、面の連なりとして再構成されます。十和田の豊かな自然から着想された季節ごとに異なる光のプログラムが、街を行き交う人々の夜を彩ります。
撮影:北村光隆
制作年:2008
素材:照明機材
【げんびサポーター(ボランティア)限定トークイベント】
髙橋匡太《いろとりどりのかけら》
2021年7月15日 収録