美術館
椿昇
通りに面した前庭に、椿昇は突然変異的に巨大化した真っ赤なハキリアリの彫刻作品を展示しました。
コスタリカの熱帯雨林に生息するハキリアリは、その攻撃的な風貌からは想像できませんが、森の木の葉を切り出し、菌床をつくってキノコを栽培し、それを食する農耕アリです。椿は、このハキリアリをロボットのように巨大化させることで、われわれには計り知れない多様性をもつ自然界の営みに目を向けさせると同時に、経済成長という強迫観念にしばられ、農業を危機に陥れた肥大化する現代の消費社会に警鐘を嗚らします。
椿は、1980年代後半より、生物や有機体が突然変異的に膨張したようなカラフルな巨大彫刻をつくってきました。「横浜トリエンナーレ2001」では、全長55メートルの巨大なバッタのバルーンをホテルの壁面に出現させて、グローバリゼーション過信に警告を発するなど、近年は、社会に存在するさまざまな問題をポピュラーな昆虫の姿に寄生させ、メッセージ性の強い作品として発表しています。
撮影:小山田邦哉
椿昇
1953年京都府生まれ。京都市立芸術大学美術専攻科修了。「Against Nature: Japanese Art in the Eighties」展(サンフランシスコ近代美術館ほか、1989)に《Fresh gasoline》を出品。「第45回ヴェネチア・ビエンナーレ」(イタリア、1993)ではアペルト部門に参加。「横浜トリエンナーレ2001」(神奈川)で《インセクト・ワールド─飛蝗(バッタ)》を出品。主な個展に、「Noboru Tsubaki」(サンディエゴ現代美術館、アメリカ、1992)、「国連少年」(水戸芸術館、茨城、2003)、「椿昇2004-2009─GOLD/WHITE/BLACK」(京都国立近代美術館、京都、2009)、「PREHISTORIC_PH」(霧島アートの森、鹿児島、2012)などがある。「醤の郷+坂手港プロジェクト」(瀬戸内国際芸術祭2013、小豆島町、香川)、「AOMORIトリエンナーレ2017」(青森市)、「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020」(京都市)などの芸術祭でディレクターを務める。
素材:鉄、FRP
サイズ(W×D×H):601×624×395 cm
協力|木下徹哉(造形師)