ストリートファニチャー
劉建華(リュウ・ジェンホァ)
官庁街通りに置かれた2つの大きな枕。中央には誰かがつい先ほどまで頭を横たえて眠っていたような跡が残っています。この枕をつくった劉建華(リュウ・ジェンホァ)は子どもの頃から陶磁器に親しみ、靴や帽子やかばんなどの日用品を陶器で再現し、彫刻作品にする作家です。
枕は私たちの日常生活に欠かせない道具です。それは寝室にあるのが当たり前ですから、公共の歩道の上に置かれると違和感があるのではないでしょうか。なぜ枕がその場所にあるのか、理由が不可解なものであればあるほど、驚いたり訝しく思ったりするでしょう。寝ていた跡があるということは、寝ていた誰かがまた戻ってくるかもしれません。その時ここは、寝ていた誰かのための場所なのでしょうか、それとも公共の場所なのでしょうか。そう考えると、プライベートな日常と公共の空間、夢と現実、ひとりと大勢、夜と昼といった、枕から連想されるさまざまな事柄の対比が浮かび上がってきます。
この枕は、彫刻であると同時にベンチとしても機能します。この通りを歩いて疲れたら、ちょっとこの枕に腰掛けてみましょう。そして少しの間、寝ている時の私たち自身のことを想像してみましょう。官庁街通りは、私たちにとってもっと親しげな場所に変わるのではないでしょうか。
撮影:小山田邦哉
劉建華(リュウ・ジェンホァ)
1962年吉安(中国)生まれ、上海(中国)在住。1989年景徳鎮陶瓷大学卒業。2004年より上海大学美術学院の教授。主な個展に「Liu Jianhua: Metaphysical Objects」(Fosun Foundation Shanghai/上海、中国、2022年)、「Liu Jianhua」(Pace Gallery、パロアルト、アメリカ、2019年)など。主なグループ展に第14回光州ビエンナーレ(韓国、2023年)、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア、2017年)、
奥能登国際芸術祭(石川、2017年)など。主な収蔵先に、ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター、テート・モダン、ニューヨーク近代美術館など。
制作年:2010
素材:FRP
サイズ(W×D×H):各 240×125×50 cm
インタビュアー:見留さやか(十和田市現代美術館)
実施日:2023年8月4日
「中空を注ぐ」展 関連プログラム
劉建華 トーク
2023年6月24日 収録
劉建華(リュウ・ジェンホァ) 中空を注ぐ
2023年6月24日(土) – 11月19日(日)
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