美術館
マイケル・リン
マイケル・リンは、日常の中で伝統的に育まれた装飾を、伝統的ではない環境に展開する作品で知られる作家です。今回リンは十和田市現代美術館のために、高さ9メートルの吹き抜け空間をもつ休憩スペースに絵画作品を展開しました。けれど、それは壁に掛けられたものではなく、足下に広がっています。国際的に活躍するリンは、日常で使われるテキスタイルからとった伝統的な花模様を、壁や床に描いた絵画作品で知られています。ここでは、十和田市の伝統工芸である南部裂織(さきおり)から着想を得た花模様のコラージュを描きました。リンは、壁との間に少し隙間をつくることで、文脈的枠組みとしての建築を意識させ、作品を絨毯のように浮かび上がらせます。
リンの作品は訪れた人が自分の家でくつろげるような親密な空間だと評されます。彼自身も、アートとは、親しみやすい環境の中で日々の生活とともに存在するもので、飾って眺める高尚なオブジェではないと考えます。リンの作品は、観客の存在によって完成する関係性のアートなのです。公共空間でのプロジェクトが多く、テニスコートやスケートボードランプ、ミュージアムのカフェといった場所に描かれる作品は、社会的な相互作用をもつアートだと位置づけられます。
撮影:小山田邦哉
マイケル・リン
1964年東京生まれ。アート・センター・カレッジ・オブ・デザイン(アメリカ)で学ぶ。ブリュッセル(ベルギー)、上海(中国)、台北(台湾)在住。マイケル・リンは見る対象としてではなく、長く身を置くことができる空間としての絵画を目指し、公共空間としての巨大な絵画インスタレーションを生みだす。彼の作品は伝統的な台湾のテキスタイルのパターンやデザインを流用している。主な展示として、パレ・ド・トーキョー(パリ、フランス、2003)の展示、個展「Michael Lin」(セントルイス現代美術館、アメリカ、2004)など。
制作年:2008
素材:アクリル塗料
サイズ(W×D×H):893×1314 cm
インタビュアー: 中川千恵子(十和田市現代美術館)
実施日: 2024年1月31日