美術館
名和晃平
名和晃平は、セル(細胞・粒)で世界を認識するという独自の概念を軸に、ガラスや液体などのさまざまな素材や3Dスキャンなどの最新の技術を用い、彫刻の新たなあり方を追求しています。
名和の代表作「PixCell」シリーズは、インターネットを介して集めた動物の剥製や楽器などの物体の表面を、透明の球体で覆った彫刻作品です。「PixCell」という言葉は、Pixel(画素)とCell(細胞、粒、器)を掛け合わせた造語です。
私たちがパソコンや携帯などの画面で見ている画像は、細かいPixelで構成されています。剥製などの物体も透明の球体(セル)で覆われることにより、異なる物体でも同一の質感に変化し、セルのレンズの効果によって、物体の表面は拡大され歪曲されます。セルによって分割された画像は、鑑賞者の視点の移動に合わせて映像のように変化していきます。触覚的、視覚的なリアリティを持つ現物が、映像としてしか知覚できなくなります。
名和の作品は、効率や利便性を重視することで身体感覚をそぎ落としてきた、情報社会の現状を彫刻作品として表現していますが、ネットを介した経験にますます傾いているコロナ禍の現在と奇しくもリンクしています。
撮影:小山田邦哉
名和晃平
彫刻家/Sandwich Inc.主宰/京都芸術大学教授。1975年生まれ。京都を拠点に活動。
2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。セル(細胞・粒)という概念を機軸として、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。近年では、アートパビリオン「洸庭」など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家/ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《VESSEL》を国内外で公演中。2018年にフランス・ルーヴル美術館 ピラミッド内にて彫刻作品《Throne》を特別展示。
制作年:2018
素材:ミクストメディア
サイズ(W×D×H):189.6×150×217.3cm
所蔵:個人蔵(寄託)
2023年9月まで公開