美術館

スタンディング・ウーマン

ロン・ミュエク


作品について

 最初の展示室に足を踏み入れた瞬間、観客はロン・ミュエクの巨大な彫刻作品に遭遇します。高さ4メートル近くある女性像は、見る者を圧倒する迫力で佇んでいます。憂いを含んだ風情はあまりにもリアルで、大きすぎるサイズとのずれが、奇妙な感覚を覚えさせます。窓に顔を向けた彼女は、通り過ぎるなにかを追いかけるように視線を走らせ、観客と目を合わすことはありません。けれど、刻々と移り変わる自然光を浴びた彼女は、見る角度によってさまざまな表情を見せ、やがて彼女の人生や人の生死について想像をめぐらすことになります。ただモノとしてある彫刻ではなく、その背後に多様なストーリーを喚起させる存在です。
 巨大な少年像《Boy》で世界中の注目を集めたミュエクは、肌、皺、透き通る血管、髪の毛の一本一本にいたるまで、人間の身体の微細な部分を克明に再現しながら、つねにスケールにおいて大胆な変化を加えた作品を発表してきました。初期の作品から、彼が制作しているのは架空の人物です。

撮影:小山田邦哉
Courtesy Anthony d’Offay, London


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